チキンとプラム ~あるバイオリン弾き、最後の夢~

 自伝的コミックを映画化したアニメ「ペルセポリス」で注目されたイラン出身の女流監督マルジャン・サトラピが、自身初の実写作品に挑んだコメディ・ドラマ。死を決意した主人公が、最期の8日間で振り返るほろ苦い人生の思い出の日々を、アニメ表現をはじめとしたコミカルかつファンタジックな演出を織り交ぜつつ、切なくもロマンティックに綴る。主演は「潜水服は蝶の夢を見る」のマチュー・アマルリック、共演にマリア・デ・メディロス、イザベラ・ロッセリーニ、ゴルシフテ・ファラハニ。共同監督には前作と同じくヴァンサン・パロノー。
天才音楽家のナセル・アリは命よりも大切なバイオリンを妻に壊されてしまう。絶望した彼は死ぬことを決意し、自室に引きこもる。そして死に向けての8日間のカウントダウンが始まる。そんな彼の脳裏を、ままならなかった人生の思い出が去来する。中でも、若き修業時代に出会った美女イラーヌとの叶わなかった恋は、今も彼の心を締めつけるのだったが…。<allcinema>

2011年 原題:POULET AUX PRUNES CHICKEN WITH PLUMS
イメージ 1上映時間:92分 製作国:フランス/ドイツ/ベルギー
叶わなかった愛が、いちばん美しい。
監督:マルジャン・サトラピ ヴァンサン・パロノー
製作:ヘンガメ・パナヒ
原作:マルジャン・サトラピ             『鶏のプラム煮』(小学館集英社プロダクション刊)
撮影:クリストフ・ボーカルヌ
プロダクションデザイン:ウド・クラマー
衣装デザイン: マデリーン・フォンテーヌ
編集:ステファヌ・ローシュ
音楽:オリヴィエ・ベルネ
出演:マチュー・アマルリック  ナセル・アリ
エドゥアール・ベール  アズラエル
●マリア・デ・メディロス  ファランギース
●ゴルシフテ・ファラハニ  イラーヌ
キアラ・マストロヤンニ  リリ(成人後)
イザベラ・ロッセリーニ  パルヴィーン
エリック・カラヴァカ   ジャメル・ドゥブーズ 
天才音楽家のナセル・アリは命よりも大切なバイオリンを妻に壊されてしまう。~略~そして死に向けての8日間のカウントダウンが始まる。

なんて、解説に書いてある通りのストーリーなので、
最初、ちょっと睡魔に襲われてしまいました…^^;
だって、死のうと思っても、そう簡単に実行できるわけでもない。
おまけに、時系列がばらばらだし、コメディなのかシリアスなのかも分からない。

ところが、ナセルの叶わなかった恋物語が語られるようになってから、
俄然面白くなってきました。

ナセルが一目惚れした美しい女性イラーヌ。
互いに惹かれあうんだけど、父親の反対にあって結局は実らない…。

その後、演奏家としての各国での修行の日々や、仕方なく結婚した今の妻とのことなど、
模型やCGなどを駆使した映像が素敵でした。
台詞がなくなり、音楽で綴られていきます。

悲しい人生なのに、コミカルに描かれていて、
ナセルは思い通りに死ぬことができるんだけど、
何故だかハッピーエンドみたいに見えるんですよね。

死ぬ前に、ナセルはイラーヌとすれ違い、声をかけます。
でもイラーヌは人違いだと去っていくんですね。
イラーヌはお祖母ちゃんになっていて、
彼女が自分なりの人生を送ったということが分かります。
それでも、ナセルとの再会に涙せずにはいられない…。
互いに「忘れられない人」だったことが想像できるシーンで、
それが、最後のナセルのお葬式に繋がっていくんですよね。

遠くで見送るイラーヌと、喪主として見送る妻。
ナセルはイラーヌを忘れられず、妻を愛してはいなかったかもしれない。
でも、妻は違った。
いがみ合ってばかりいたわけじゃない。
夫のために好きなチキンのプラム煮を作るところなんて、ほんとにいじらしい…。

ふたりの女性に愛されたナセル。
それはそれで幸せな人生だったのかもしれない。

生きてるときにその価値が分かるのではなくて、
死ぬときにどう思うか、死んでから人がどう思うか。
そういうものなのかもしれませんね。

甘く切ない恋物語…。
お気に入りの一本になりました。

個性的な役に味があって素晴らしかったです。