紙屋悦子の青春

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劇作家・松田正隆が自らの母親の実話を基に書き上げた戯曲を名匠・黒木和雄監督が映画化した戦争ドラマ。太平洋戦争末期を舞台に、海軍航空隊に所属する2人の若者と、一人の純朴な女性との瑞々しくも切ない恋と友情を静かに見つめる。出演は、原田知世永瀬正敏松岡俊介。なお、黒木監督は本作の公開を控えた2006年4月12日に急逝され、これが遺作となった。
 昭和20年の春、鹿児島の片田舎。両親を失ったばかりの紙屋悦子は、優しい兄夫婦と3人で慎ましい毎日を送っていた。そんな彼女が秘かに想いを寄せていたのは、兄の後輩で海軍航空隊に所属する明石少尉だった。ところが悦子に別の男性との縁談が持ち上がる。相手は明石の親友、永与少尉だった。それは明石自身も望んでいることだと聞かされ、深く傷つく悦子だったが…。(allcinema)


戯曲が基になっていると知って、納得でした。

場面が紙屋家だけなのです。
登場人物の会話と表情だけで進んで行くのです。


兄夫婦の会話が、洒落てていいんです。
戦時中に、それも鹿児島で、こんなに奥さんが発言できていたのでしょうか。
そのくらい、お兄さんはたじたじなのです。
(九州って男尊女卑の思想は根強いと思いますから…)

とても戦時中とは思えない、優しい空気、空間があります。

ほのぼのとして、これでいいのかと不安になるくらいでした。
これでは、戦争の悲惨さや苦しさは伝わらないのでは、と心配になりました。


ところが、最後。
悦子が想いを寄せていた明石少尉が、出撃の報告に来たときから、
涙が止まりませんでした。


戦地へ赴く明石は、愛する人を友人に託し、
悦子は一言も想いを告げずに、ただ武運を祈る言葉だけ…。

追いかけていくことも出来ず、泣き崩れる悦子。

兄夫婦も、そんな悦子を見守ることしかできない。


戦争シーンは一切ありません。
服装やせりふ、映像だけで戦争の悲惨さを伝えていきます。

今の時代では、想像もつかないことばかりでしょう。
悦子のことだって、納得できない人もいるかもしれません。
でも、本当にそういう時代だったんですよね…。


好きな人に好きだと言えることが平和なんだと、改めて感じました。


戦争を少し考えてみたい方、
現代とは違った青春を垣間見たい方、いかがでしょう。