4分間のピアニスト

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本国ドイツで大ヒットした音楽ヒューマン・ドラマ。類いまれなピアノの才能を持ちながら殺人犯として収監され、刑務所の中でも手のつけられない問題児となった女囚と、彼女の才能に惚れ込み残り少ない人生を懸ける老教師、そんな2人の女性の魂のぶつかり合いを衝撃的に描く。主演は新人ハンナー・ヘルツシュプルングとドイツの人気俳優モーリッツ・ブライブトロイを息子に持つベテラン女優モニカ・ブライブトロイ
 ピアノ教師として刑務所を訪れたトラウデ・クリューガーは、机を鍵盤代わりに無心で指を動かしている女性に目を留める。彼女の名はジェニー。天才ピアニストとして将来を嘱望されながらも道を踏み外してしまい刑務所暮らしの日々。心を閉ざし、衝動的に暴力を振るう彼女は刑務所内でも札付きの問題児。それでも、ジェニーの才能を見抜いたトラウデは所長を説得して特別レッスンを始める。来るべきコンクールでの優勝を目指し、厳しくも情熱をもって指導に当たるトラウデに、ジェニーも次第に心を開き始めるのだったが…。
(allcinema)


弾く時だけわかる。
何のために生まれてきたか。


2006年 ドイツ製作作品



音楽映画をチョイスしている今日この頃です。


公開時、パンフレットの青が印象的で気になっていた作品です。



さて…。
冒頭のシーンから驚かされます。
人の姿が不自然なので、何だろうと思っていると、首を吊った人影だったのです。

そんなシーンから始まるのに、なんとも不似合いなグランドピアノが刑務所に運び込まれてきます。


老ピアノ教師・クリューガーと、受刑者のジェニー。
ジェニーに類い稀な才能があると知って、クリューガーがレッスンを始めるのですが、
ジェニーは、一筋縄ではいかないのです。

他人にも自分にも無関心。
そして常に苛立っている。

ジェニーはなぜそんなに苛立っているのか、
また、クリューガーがなぜそんなにジェニーにこだわるのか、
納得がいかないまま物語が進んでいきます。


…観てる私もちょっと苛立ちながら…(^^ゞ



クリューガーの過去と、ジェニーの過去が明らかになって初めて納得しました。


生きたくても生きられない時代があった。
やりたいこともできない時代があった。

戦争という過酷な時代を過ごしてきたクリューガーにとって、
溢れる才能を無駄にするジェニーが許せなかったんですね。


でも、はたしてジェニーにそれが伝わったでしょうか。

ジェニー自身にも辛い過去があって、それを乗り越えられない。
ラストのわずか4分間の演奏で、乗り越えられたのか…。



ふたりは理解し合えたのでしょうか。


そうは感じませんでした。

ふたりはそれぞれ自分の思いだけをピアノに託した…。
そんな気がしました。



もっとふたりの関わりが変化していけばよかったのかとも思いましたが、
それは日本人的な感傷でしょうか…。


モーツァルトソナタから始まってシューベルトシューマン
大好きなピアノ曲が流れ続けます。

ラストのクリューガーが言うところの“低俗な音楽”と化したシューマンのコンチェルトは、
素晴らしかったです。


決して楽しい映画ではありません。
すれ違って行くふたりの心情に、身勝手さすら感じますが、
生きよう、生まれた意味を感じよう、という部分は伝わるのではないでしょうか。