ミリオンダラー・ベイビー

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許されざる者」「ミスティック・リバー」のクリント・イーストウッドが監督・主演を務めた衝撃のヒューマン・ドラマ。厳しいボクシングの世界を題材に、そこに生きる名もなき男女の悲愴な人生模様を綴る。アカデミー賞で作品賞をはじめ主演女優、助演男優、監督賞の計4部門を受賞。共演は、ともに本作でオスカーを獲得した「ボーイズ・ドント・クライ」のヒラリー・スワンクと「ショーシャンクの空に」のモーガン・フリーマン
 ロサンジェルスダウンタウンにある小さなボクシング・ジムを営む老トレーナー、フランキー。その指導力に疑いのない彼だったが、選手を大切に育てるあまり、成功を急ぐ優秀なボクサーは彼のもとを去ってしまう。そんなある日、31歳になる女性マギーがジムの門を叩き、フランキーに弟子入りを志願する。13歳の時からウェイトレスで生計を立てるなど不遇の人生を送ってきた彼女は、唯一誇れるボクシングの才能に最後の望みを託したのだった。ところが、そんなマギーの必死な思いにも、頑固なフランキーは、“女性ボクサーは取らない”のひと言ですげなく追い返してしまう。それでも諦めずジムに通い、ひとり黙々と練習を続けるマギー。フランキーの唯一の親友スクラップはそんなマギーの素質と根性を見抜き、目をかける。やがてマギーの執念が勝ち、フランキーはついにトレーナーを引き受けるのだが…。(allcinema)


2004年作品


アカデミー賞まで取った作品でありながら、TVであっていたのを横目で見たくらいの記憶でした。

単純なボクシングのサクセスストーリーかと思っていたので、尊厳死に関わる内容だと知って驚きましたし、
観てみなくては…!と思ったのでした。


マギーの熱心さや、執着心でフランキーが根負けしていく導入部分から、
着実に何が起こるのか、という思いで引き込まれていきました。


老年のボクサーと30歳を超えた新人ボクサーと、ふたりの抑えきれない情熱が感じれらました。

練習を重ねていくうちに、ヒラリー・スワンクの体が変わって行く様は見事でした。
絞られて筋肉質になり、そして動きが機敏になっていくのです。
アルバイトをしながらお金を貯めて、ボクシングに熱中する様は、
こういうことをハングリー精神というんだなと、必死になることの美しさを見ました。


ウエイトレスのバイト中、客の残した魚などを持ち帰ってはそれで夕食とするシーンでも、
貧しさとか切なさとか、そういう悲哀を感じさせるのではなく、
目的のための単なるステップでしかないかのように、マギーはいつも笑顔でした。


家族を想うシーンは、その笑顔を曇らせてしまいます。
こんな家族でも家族なんだと、必死で納得しようとしますが、
それでもあまりの仕打ちに腹が立ちました。


クリント・イーストウッドは老いた中にも張りのある俳優です。
そんなイーストウッド演じるフランキーは、
期待していたボクサーに出て行かれたことで、多少やけになっていた感じはあるものの、
マギーと出会って、再び夢を追いかけていこうとします。
マギーが昇りつめていくことを、大げさにはないけれど心から喜んでいるのが伝わってきます。


ぐいぐいと引っ張られて進みますが、
このふたりが輝いていればいるほど、後半は苦しくなります。

意識はあっても体が動かない。
そんなマギーを見つめるフランキー。

このふたりの間には、とても大きな人間愛を感じます。
家族はあっても優しくされないマギーと、
娘宛ての手紙が、送っても送っても戻ってくるフランキーと、
そんなふたりだから、互いの存在を、
乾いたスポンジが水を吸うように欲していた気がしました。

それだけにマギーとフランキーの決断は、思い結末です。


尊厳死はとても重いテーマです。
ここでは一つの結論が描かれていますが、それは観る者に委ねられた結論だと思います。
フランキーと同じ道を選ぶか否か…。

それは一人一人が観終わった後に考えることでしょう。

ふたりの名優と、物語の進行役のモーガン・フリーマンと、キャストも素晴らしいです。