海を飛ぶ夢

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事故で四肢麻痺となった主人公が、法律では認められていない尊厳死を求めて闘いを繰り広げる姿を通して、生とは何かを問いかけていくヒューマン・ドラマ。尊厳死を望んだ実在の人物ラモン・サンペドロの手記を基に「アザーズ」のアレハンドロ・アメナーバル監督が映画化。主演は「夜になるまえに」のハビエル・バルデムアカデミー賞外国語映画賞をはじめ数々の映画賞を受賞。
 スペイン、ラ・コルーニャの海で育ったラモン・サンペドロは19歳でノルウェー船のクルーとなり、世界中を旅して回る。だが1968年8月23日、25歳の彼は岩場から引き潮の海へダイブした際に海底で頭部を強打、首から下が完全に麻痺してしまう。以来、家族に支えられながらも、ベッドの上で余生を過ごさなければならなくなったラモン。彼にできるのは、部屋の窓から外を眺め、想像の世界で自由に空を飛ぶことと、詩をしたためることだけ。やがて事故から20数年が経ち、彼はついに重大な決断を下す。それは、自ら人生に終止符を打つことで、本当の生と自由を獲得するというものだった。そしてラモンは、彼の尊厳死を支援する団体のジェネを通じて女性弁護士フリアと対面し、その援助を仰ぐことに。また一方、貧しい子持ちの未婚女性ロサがドキュメンタリー番組でのラモンを見て心動かされ、尊厳死を思いとどまらせようと訪ねてくる…。(allcinema)


約束しよう。
自由になった魂で、
きっとあなたを抱きしめる。


2004年 スペイン製作




静かな感動、というのでしょうか。
感情が大きく揺れるような作品ではありませんでした。

事故で、28年間身動きできずに、死ぬことを考えているラモン。
そんなラモンに、彼を理解しようとした弁護士のフリアがやってきます。
このふたりの間に生まれた愛情。
どんどん魅かれあっていくのが伝わってきます。

けれどフリアにも、ラモンと同じような気持ちがあったことが分かり、
そのことでふたりが結びついたのなら、悲しいことだなと思っていました。


フリアがなぜ再びラモンを訪ねられなかったのか…。
夫との抱擁の映像だけでしたので、想像の域を出ませんが、
同じ傷を舐めあうような結末、
同じ傷を持つ者にしか分からない結末、
にならなくてよかったと思いました。

もちろん、彼女自身の病は悲しかったですが…。




ラモンへ愛情を注ぐのは、もちろんラモンの家族。

家族にしか分からない苦労はあるだろうけれど、
愛情が足りないと非難されたときに見せた家族の苦悩の表情。
死んだら二度と会えないんだぞ、と語るお兄さんの言葉。
息子に死なれるだけでもつらいのに、本人が死を望むとは・・、と首を振る父親の姿。

どれもたくさんの愛情を感じます。


そして旅立つラモンを見送るシーンでは、胸が詰まりました。



もう一つの愛情は、ラモンと出会って生きる力を与えられたロサ。
ロサの愛情は、ラモンを幸せにしたのでしょうか。

そして、海を愛したラモンが最後に見た海は、優しかったのでしょうか。



生きることは義務ではなく権利。

そう言い続けたラモン。
人が人として死ぬことがどういうことなのか。

お兄さんがいなくなったら、自分では家族を守ることができない。
そう語るラモン。
厳しいけれどそれが現実。


生きていくことは綺麗ごとばかりではダメなんだと、
現実を見せられた気がしました。

実話に基づく話だということでしたが、
まるでドキュメンタリーを見ているかのような錯覚を起こしたのは、
主演の“バビエル・バルデム”の見事さでしょうか。


海を渡る風のような音楽が、重いテーマの作品を包み込んでいたのが救いでした。