ラスト、コーション

「ブロークバック・マウンテン」のアン・リー監督が、一人の女スパイの愛の葛藤を描く官能サスペンス。日本軍占領下の上海と香港を舞台に、想いを寄せる人のため図らずも抗日運動に身を投じたヒロインが、日本軍と手を組む祖国の裏切り者の男を暗殺すべく、色仕掛けで接近していく中で展開していく男と女のギリギリの心理戦がスリリングに綴られていく。過激な性愛描写が大きな物議を醸したものの、ヴェネチア国際映画祭金獅子賞はじめ多くの映画賞を獲得するなど各方面から高い評価を受けた。主演は「インファナル・アフェア」のトニー・レオンと大抜擢となった無名の新人タン・ウェイ。共演に人気歌手のワン・リーホン。
　1942年、日本軍占領下の上海。ごく普通の女子大生チアチーは、抗日運動に心血を注ぐクァンに秘かな恋心を抱き、彼と行動を共にする中で次第に感化されていく。やがてチアチーは、日本の傀儡政府に協力する特務機関のリーダー、イーに近づき暗殺を遂行する危険な任務を与えられる。さっそく身分を偽りイー夫人に接近し、冷徹で異常なほど用心深いイーを誘惑する機会を窺うチアチーだったが…。(allcinema)



その愛は、許されるのか？


2007年　中国／アメリカ製作作品


原題：色・戒　LUST, CAUTION

ヴェネチア国際映画祭 ２００７年
■ 金獅子賞 アン・リー
■ 金オゼッラ賞(撮影) ロドリゴ・プリエト

ものすごく話題になった、という感じではなかったけれど、
ヴェネチアで金獅子賞を受賞したことで、目を引いた作品ではありました。

大胆なセックスシーンもあるとか…。

時代背景を理解するとこれはただならぬ内容で、単純な恋愛ドラマでは済まされません。
戦争というある種狂気なものの中では、人は人らしく生きることなどできないのかもしれません。
たとえそれが国を護ることだとは言え、スパイとして自分の身を武器にするなど、
今の世では考えにくいことです。

主人公のチアチーに、どこまでの愛国心があったのか、
何となく憧れの先輩に着いて行ったら、とんでもない世界だった、的な感じはするし、
一度逃げ出しておきながら、先輩との再会で同じ世界に戻るところなど、
多少消化不良な感じはありましたが、
そこへ戻ることが、イギリスにいる父親の元へ行ける唯一の方法だと感じたチアチーを、
浅はかだとは言えません。

そのチアチー達の標的イーを演じたトニー・レオンは、
終始笑顔を見せることなく感情を押し殺した演技です。
チアチーに贈ったダイヤモンドの指輪に「ダイヤに興味はないが、身につけた姿を見たい」
というシーンがあります。
直接愛を語るのではなく、こういった形での告白にはただただ脱帽です。

そんなイーの想い。
そして、イーへの想いがチアチーを苦しめていきます。

最初は任務だと、誘うような上目使いでイーを見つめるチアチー。
あからさま過ぎるくらいの媚び方に、ちょっと引いてしまうのですが…。

果たしてイーは、本当にチアチーを信じていたのか…。

かなり大胆なシーンが何度かあります。
それぞれに、意味を成しているように感じます。
ただ、意味はあってもあまり愛情を感じるシーンではないかな。
観ていて苦しくなりました。

愛して愛して…。
愛しきったチアチーをは、本望だったと信じたいです。