ブレイブ

イメージ 1人気若手俳優ジョニー・デップが、監督・脚本・主演の三役に挑戦した意欲作。スナッフ・ムービーへの出演を決意した男が家族と過ごす7日間を通し、米国におけるネイティブ・アメリカンの現状、そして彼らのスピリチュアルな世界を描く。
 アメリカの片田舎で家族とつましい生活を送るネイティブ・アメリカンのラファエル。社会から冷遇され仕事に就くのもままならない彼はある日、謎の男マッカーシーと出会い、スナッフ・ムービー(実際に人を殺す映画)への出演と引き換えに5万ドル払う、という誘いを受ける。そして、ラファエルは愛する妻と子供たちのため命を捨てると決心し、その仕事を引き受けることに。こうして、撮影までの残された一週間を全て家族に費やし、報酬5万ドルを村に託したラファエルは、ついに最期の日を迎えるが…。(allcinema)


勇気を伝えたい

1997年製作作品


監督:ジョニー・デップ
音楽:イギー・ポップ




ネイティブアメリカンの部族のひとつ、ブラックフット族の中で、もっとも勇敢な男たちは「ブレイブ」と呼ばれた。彼らの魂は、広大な大地に今も生き続けている


ネイティブアメリカンの生活を通して「生きる勇気」「幸せの価値」を描きたかった。
何か本能的なものにかりたてられ夢中に撮っていました。
これは人の生き方の真意を問う愛の映画です。
皆さんもこの映画を観て、何かを感じ、何かを考えてほしい。   ジョニー・デップ


ジョニーの作品リストを見ていたら…。
あら、これ観てない。と思ったのがこの【ブレイブ】でした。
スナッフ・ムービーへ出る物語、だと単純に思っていたので、気が進まなかったのです。

しかし…。
やはり映画というのは、自分で観てみないと分からないのだと、改めて感じました。

スナッフ・ムービーのことは、それほど強烈に描かれてはおらず、
そのことが重要なわけではありませんでした。


想像を絶する貧困。
それゆえに、ラファエルは刑務所に入ったこともあるし、アル中だったりする。
学校にだって満足に行っていないのかもしれない。
そんなラファエルが、ひとりで考えて行動したのがスナッフ・ムービーへの出演だった。

誰かに相談すれば?

そういうことさえ考えることができないくらい、いろんな意味で貧困なのかもしれない。


わずか5万ドルで家族が救えるのか。
お金がすべてではないなんて、綺麗事に聞こえます。
お金があれば家が買える。子供を学校にやれる。
そんな貧困を知りません。

そしてまた、お金では買えない物の存在も感じます。
妻や子供。
家族が幸せになるために命を投げ出すのは、家長の務め。
あまりに不器用な男の生き方です。
あまりに悲しい選択です。


それでもラファエルは決断します。
家族を守るために…。

そして家族と過ごす最後の1週間に、すべての愛情を注ぎます。
限られた時間だからこそ、ラファエルは精一杯生きられたのかもしれません。


セリフが少なく、全編を通して静かに流れていきます。
照りつける太陽、砂埃、むき出しの岩といった映像はとても美しく、
深刻な内容とは裏腹に、音楽は心に沁みる穏やかさでした。

とくに、ラファエルが夕日に向かって歩くシーンや、
夕日の中での、シルエットだけのラブシーンは、印象に残るものとなりました。

子供とうまく接することができなかったラファエルが、奥さんにコーヒー?を入れるシーンから始まり、
最期の日、涙を浮かべて子供にキスをして、同じようにコーヒーを入れる。
同じような朝なのに、ラファエルがもう二度と家族を会えないかと思うと、胸が詰まりました。


鉄のエレベーターのドアが閉まるまで、無言で続く映像に悲しみが伝わってきます。

ラファエルの行為が報われることを、ただただ祈るだけでした。