ミス・サイゴン~博多座公演~

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念願の【ミス・サイゴン】を観て来ました。

博多座で、今年の1月から3月までのロングランです。
今までにいろんなところでこのミュージカルのことを見聞きして来ましたが、
なかなか観ることができませんでしたので、本当に楽しみでした。

今回は3か月のロングランということで、チケットの予約をした時、普段はA席なんてお値段の都合上、
取ったことはなかったのですが、1万6千円のA席を思い切って取ることにしました。

前から4列目です。
この席からだと、役者さんの表情もよく分かります。

開演時間間際になって見渡すと、客席はほぼ満員。
人気の高さがうかがえるようでした。


そしていよいよ、エンジニア(市村正親)の経営するキャバレーのシーンから、物語は始まりました。

戦争で何もかも失くしてしまったキム(ソニン)が、初めて愛したクリス(藤岡正明)はアメリカ兵で、
サイゴンの陥落が間近な中で、クリスとの穏やかな時間が続くはずもなく…。
アメリカへ帰ってしまったクリスを追って、エンジニアに手をひかれていくキムにはクリスとの子供が…。


休憩を挟んで後半は、サイゴン陥落から3年。
クリスはアメリカへ戻り結婚。エレン(RiRiKA)という妻がいる生活。
キムは子供を育てながら、ただひたすらにアメリカへ、クリスへの想いを馳せる毎日。
キムが望んだクリスとの再開は、大きな代償を払うことになります。


辛さや必死さが怒涛のように押し出されるソニンのキム。
これには多少参りました。
一方的にそれを訴えかけられるようで、息つく暇さえ与えない感じなのです。

しかし、後半、ふと思いました。
キムは17歳で恋をし、子供を産んだ…。
その若さなら、周りが見えなくなるほどの一途な愛情をクリスへ向けたとしても不思議はないかと…。

3年もの間、ただ黙って待つしかない自分への愛情が変わらずにいられると信じるのは、
やはり若さではないでしょうか。

そんなことを思いながら、再開のシーンで、
キムと、クリスの妻・エレンの想いが交錯したとき、その後の展開にどんな道があるのかと考えていました。
三人が…三人と子供の全員が幸せになる方法があるのかと…。

エレンも、キムのことを理解しようとはしても、夫を手放す気持ちにはなれない。
クリスも、キムと子供を救いたいけれど、妻を手放す気持ちにはなれない。


子供を生きる糧としていたキムが、子供の幸せのためにと手放したとき、はたしてキムは生きていけるのか…。

結末には大いなる悲しみが待っていました。


キムとクリスが出会ったのが戦争の最中だったというのが、悲しみの全てでしょう。
ごく普通に出会っていて、ふたりが恋に落ちたのなら、
こんな悲しみは待っていなかったでしょう。

戦争は、人の心に大きな傷を残すことしかないんだと、改めて感じました。



キムの純粋な気持ちに苦しさも感じつつ、もう少しそこに優しさを感じられたら満足度は高かったのかな。
そんな風に欲張ってしまいました。


この作品は、複数の人で同じ役を演じているので、今回は市村正親さんを目当てに観にいきましたが、
終わった後に知り合いに声をかけられ、“3回目よ”と言われたとき、
余裕があったら、違う人でも観てみたいと思ったのは言うまでもありません。

市村正親さん。
1949年生まれということですが、軽やかにステップを踏み。歌う姿は年齢を感じさせずに
本当に素晴らしかったです。
数回のカーテンコールの後お一人で出てこられて
「次、いつお会いできるか分かりませんが…」と仰ったことがいつまでも耳に残っておりました。

ソニンさん。
最後まで声量が落ちず、素晴らしかったです。
…キム役や本田美奈子さんの当たり役でしたよね。
彼女でも観たかったと思わずにはいられませんでした。


そして最後に博多座
この作品は、大掛かりな装置を要する作品として知られていますが、
オリジナル演出版を上演するには、帝国劇場でも約1ヶ月の改装工事を行うほどの舞台が
必要なのだそうです。
そのため日本では帝国劇場以外での上演は不可能でしたが、
オリジナル演出版を上演することを想定して博多座は設計されたのだと、
以前TV番組で見たことがありました
そして今年博多座は10周年。その記念の年に【ミス・サイゴン】が上演されたのです。

地方にいるとどうしても情報が遅れるか、または届かないことが多いので、
博多座はとても有難い存在です。

秋には【ダンス・オブ・ヴァンパイア】が来るそうで、こちらも観たいと思ってます。


興奮のあまり、かなり長い記事になってしまいました^^;