誰も守ってくれない

イメージ 1社会的に注目を集める殺人事件を巡って巻き起こるネットの暴走やマスコミ報道のあり方を、警察による容疑者家族の保護という新たな切り口で問い直す力作社会派エンタテインメント。「踊る大捜査線」シリーズの脚本を手掛けてきた君塚良一監督が、その取材の中から生まれてきた構想を基に自らメガフォンをとり映画化。突然兄が殺人犯となったことから追いつめられていく少女と、彼女を世間の非情な視線から守ることを命じられた刑事が繰り広げる過酷な逃避行の行方をドキュメンタリー・タッチに綴ってゆく。主演は「ザ・マジックアワー」の佐藤浩市とTV「14才の母」「母べえ」の志田未来
 ある日突然、未成年の長男が小学生姉妹殺人事件の容疑者として逮捕されてしまった船村家。両親と15歳の妹・沙織は状況も分からぬままマスコミの好奇の目に晒され、激しいバッシングに追いつめられていく。そんな中、刑事の勝浦は容疑者家族の保護という任務を命じられる。さっそく保護マニュアルに則り所定の手続きが進められ、三人別々に保護するため、同い年の娘を持つ勝浦が沙織を担当することに。しかし、沙織を匿おうと懸命に手を尽くす勝浦だったが、マスコミはその度に居場所を嗅ぎつけ執拗に沙織を追いかけ回す。やがて勝浦は、東京を離れ、ある場所へと向かうのだったが…。(allcinema)


殺人犯の妹となった少女と彼女を守る刑事の逃避行が始まる──。

2008年製作作品


監督: 君塚良一
脚本: 君塚良一 鈴木智
音楽: 村松崇継
主題歌: リベラ 『あなたがいるから』
出演: 佐藤浩市 勝浦卓美
    志田未来 船村沙織
    松田龍平 三島省吾
    石田ゆり子 本庄久美子
    佐々木蔵之介 梅本孝治
    佐野史郎 坂本一郎
    津田寛治 稲垣浩
    東貴博 佐山惇
    木村佳乃 尾上令子
     柳葉敏郎 本庄圭介




邦画はなかなか劇場で観ないので、今回もDVD鑑賞となりました。

決して気に入らない作品ではないんですが、
なんかリアリティに欠けると言うか…。

映画にリアリティを求めたいわけではないのですが、
あまりに世界が狭いんですよね~。

殺人犯の妹を保護することになった刑事の勝浦。
3年前の事件を知っている記者。
カウンセリングを受けている医師。
3年前の事件の被害者。

勝浦の世界で起こっていることが多すぎて、
被害者夫婦(柳場・石田)の登場には、そこか~と思う始末…。

被害者の妹・沙織のボーイフレンドの不審な行動も
予測がついてしまうのです。



粗捜しをしたいわけではなく…。

被害者家族を描いた作品で思い出すのは【手紙】です。
【手紙】は、長期間に渡る加害者家族の再生の話でしたが、
今作は、保護されて三日間という短い時間の話です。

娘と同世代の少女を保護することになった勝浦には、
3年前の事件で心に傷を負い、カウンセリングを受けています。
興奮すると手が震える、という症状も出たり、
その事件のせいでしょうか、
家族とも別居状態なのです。

その勝浦が守り続けたことで、
沙織は心を開いて事実を語り始めます。
そして勝浦自身も、傷を癒して新しい一歩を歩き始めます。


マスコミやネットの暴走シーンは、ただ唖然とするばかり。

糾弾!と書かれるネットの掲示板。
被害者も加害者も晒しものになっていく、ネット社会は恐ろしいです。


それでも、人の噂は75日とはよく言ったもので、
確かに沙織と彼女の家族は生涯、
加害者の家族という十字架を背負って生きて行くことになるのでしょうが、
人の口に登らなくなる日は来るでしょう。


家族を守れ。
沙織が強く生きて行けることを願うばかりです。


心が重いのは、
被害者の家族にそんな沙織の気持ちは届かないのでは、と思うからです。


警察が憎い、と怒鳴った被害者の父親(柳場)の怒りは、
こちらも消えることはないのですから…。
「犯人はいずれ戻って来るが、息子は戻らない」
被害者家族の思いです。


被害者にも加害者にもならない世の中になってほしいと、
心から祈らずにはいられません。



勝浦の相棒を演じた松田龍平
ピアスなんか開けてるチャラチャラしたやつかと思えば、
意外に切れる刑事を好演してました。

その松田龍平とは違う、渋い大人の男を演じた佐藤浩市
この人が演じると、安心して見てられますね。