あの日、欲望の大地で

イメージ 1「21グラム」「バベル」の脚本家ギジェルモ・アリアガが、2人のオスカー女優、シャーリーズ・セロンキム・ベイシンガーを主演に迎えて撮り上げた記念すべき監督デビュー作。時代と場所を越えて3世代にわたる女性たちが織りなす愛と葛藤と再生の物語を、時制を錯綜させた巧みな語り口で描き出していく。共演は、本作の演技でヴェネチア国際映画祭新人賞に輝いた期待の若手女優、ジェニファー・ローレンス
 アメリカ北東部、メイン州の海辺の街ポートランド。高級レストランの女マネージャー、シルヴィアは、心に傷を抱え、自らを罰するように行きずりの情事を繰り返す。ある日、そんな彼女は怪しげなメキシコ人男性が連れてきた12歳の少女マリアの姿に激しく動揺する…。アメリカ南部ニューメキシコ州の国境沿いの町。アメリカ人主婦ジーナとメキシコ人ニックの不倫カップルは、密会場所であるトレーラーハウスの突然の炎上で2人揃って帰らぬ人に。残されたジーナの夫はニックの家族に激しい憎悪を抱く。ところが、この事件で深く傷ついた娘のマリアーナは、いつしか不倫相手の息子サンティアゴと許されぬ恋に落ちてしまい…。(allcinema)
 
 
2008年 アメリ
原題:THE BURNING PLAIN
 
愛の傷なら、いつか輝く。
 
監督: ギジェルモ・アリアガ 
製作: ウォルター・パークス  ローリー・マクドナルド 
製作総指揮: シャーリーズ・セロン  アリサ・テイガー  レイ・アンジェリク  トッド・ワグナー 
               マーク・キューバン マーク・バタン 
脚本: ギジェルモ・アリアガ 
撮影: ロバート・エルスウィット 
プロダクションデザイン: ダン・リー 
衣装デザイン: シンディ・エヴァンス 
編集: クレイグ・ウッド 
音楽: ハンス・ジマー  オマール・ロドリゲス=ロペス 
出演: シャーリーズ・セロン シルヴィア
       キム・ベイシンガー ジー
       ジェニファー・ローレンス マリアーナ
       ホセ・マリア・ヤスピク カルロス
       ヨアキム・デ・アルメイダ ニック
       ジョン・コーベット ジョン
       ダニー・ピノ サンティアゴ
       J・D・パルド サンティアゴ(少年時代)
       ブレット・カレン ロバート
       テッサ・イア マリア 
 
TSUTAYAさんのリストに入れている理由を、すっかり忘れていることも多く、
これもその一つでした。
なので、おお、シャーリーズ・セロン! おお、キム・ベイシンガー
と、登場してくるたびに感動し…。
 
それでも登場人物が繋がっていかずに、最初は戸惑ってしまいました。
 
レストランの支配人らしきシルヴィアは、
いきずりの情事を繰り返す自暴自棄名生活を送っています。
ただ単にモテる女、という感じではなく、荒んだ感じのある女なんですが、
シャーリーズ・セロンって、そういう役は本当に似合いますね。
心の痛みが伝わってきます。
 

キム・ベイシンガー演じる母親が、不倫の末愛人とともに非業の死を遂げる。
そういうかなり強烈な場面から始まります。
そのベイシンガーの娘と、不倫相手の男性の息子。
興味本位で始まったふたりの関係。

男性二人のパイロット。
農薬散布の仕事をしているようで、その飛行機が落下。
パイロットが大けがをしてしまいます。
その男性の名前に記憶が反応します。
もしかして…?
 

シルヴィアの荒んだ生活には、
母親の非業の死と、自分の娘を捨てたこと、
という大きな罪の意識が関係していました。
なぜそうなっていったのか。
 
母親は娘にとって女であってはいけないんですよね。
潔癖な10代。
それは許されないことだった、というのはよくある感情でしょう。
 
なのに、自分も同じ過ちを犯してしまうかもしれないという不安。
 
そこまで悲観的にならなくても…。
とは思うけど、それが“血”なのかもしれません。
歳を重ねると、母親の女の部分も理解できる日もあるんですよ。
 

その母親にも悲しい傷があって、
そのせいで夫婦関係がうまくいかなくなったのかもしれない。
そういう部分ははっきり描かれていないけど、
それを受け入れてくれた男性を求めても仕方ないかも、と思わせます。
 

バラバラだった断面が繋がっていく。
メキシコの乾いた風景や、説明的な台詞の少なさ。
この監督が、後で【バベル】の脚本家さんだったと知ると、
納得してしまいます。

セロンの10代を演じたジェニファー・ローレンス
トレーラーハウスが燃えあがるシーンの、表情の変化はすごいです。
デビュー作の様ですけど、ドキッとさせられます。
 

大けがを負ったパイロットとの対面を前にドラマは終わっていきますが、
この親子にどんな未来が待っているか…。
過去の断片が再度映し出され、
悲観的だったシルヴィアに、安堵した表情が蘇ります。
それが答え、なのかもしれません。
 
サプライズはなく、主に女性の心理を描写しているので、
共感を得やすい内容ではないと思いますが、
個人的にはこういうタイプの作品は、嫌いじゃないです。