終着駅 トルストイ最後の旅

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戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』などのロシアの文豪レフ・トルストイの晩年を映画化した伝記ドラマ。自らの財産をめぐってトルストイ主義者と呼ばれる信奉者たちと激しく対立していく妻ソフィヤに辟易しながらも、長年連れ添った夫婦ならではの決して一筋縄ではいかない愛の形を、秘書として新たに派遣されてきた理想主義の青年の視点からユーモアを織り交ぜ感動的に綴る。出演はトルストイ役に「インサイダー」のクリストファー・プラマー、その妻ソフィヤに「クィーン」のヘレン・ミレン、そして若い秘書ワレンチンに「つぐない」のジェームズ・マカヴォイ。監督は「ソープディッシュ」「卒業の朝」のマイケル・ホフマン
 ロシアの文豪レフ・トルストイの許には、彼の自然主義的思想を信奉するトルストイ主義者が集い、共同生活を送っていた。トルストイも彼らの活動を積極的に支援し、ついには“遺産は全てロシア国民のために使う”という新たな遺言への署名にも同意する。ところが、50年近くも連れ添い、夫を献身的に支えてきたソフィヤにとっては寝耳に水の話。家族のための遺産を手放してなるものかと、必死の行動に出る。それは、夫婦の間に深い溝を作ってしまう。そんな中、新たな個人秘書として憧れの文豪のもとにやって来た青年ワレンチン。少々世間知らずながら、その誠実さでトルストイ、ソフィヤ両方から信頼され、2人のありのままの姿に接していくことに。そうして、愛の理想を謳い上げるトルストイが抱えるままならない愛の現実に困惑してしまう。さらに、トルストイ主義者の奔放な女性マーシャに心奪われ、ますます理想と現実の狭間で混乱を深めていくワレンチンだったが…。(allcinema)
 
2009年 ドイツ/ロシア
原題:THE LAST STATION

 
大作家と“世界三大悪妻”と名高い
妻ソフィヤとの知られざる愛の物語。
 
監督: マイケル・ホフマン 
製作: クリス・カーリング  イェンス・モイラー  ボニー・アーノルド 
製作総指揮: アンドレイ・コンチャロフスキー  フィル・ロバートソン 
       ジュディ・トッセル ロビー・リトル 
原作: ジェイ・パリーニ 
 『終着駅-トルストイ最後の旅-』(新潮文庫刊/旧題『終着駅 トルストイの死の謎』)
脚本: マイケル・ホフマン 
撮影: ゼバスティアン・エドシュミット 
プロダクションデザイン: パトリツィア・フォン・ブランデンスタイン 
衣装デザイン: モニカ・ジェイコブス 
編集: パトリシア・ロンメル 
音楽: セルゲイ・イェチェンコ 
出演: ヘレン・ミレン ソフィヤ・トルストイ
    クリストファー・プラマー レフ・トルストイ
    ジェームズ・マカヴォイ ワレンチン
    ポール・ジアマッティ チェルトコフ
    アンヌ=マリー・ダフ サーシャ・トルストイ
    ケリー・コンドン マーシャ ジョン・セッションズ ダシャン
   パトリック・ケネディ セルゲンコ
 
実は、トルストイという作家の作品はひとつも読んだこともないし
どんな人だったかも全く知りません。
ましてや奥さんが“世界の三大悪妻”と呼ばれていたことももちろん知りません。
でもなんとなく気になったこの作品。
 
知識がなかったのにもかかわらず、
いやいやそのせいで変な先入観がなかったのが良かったのかもしれません。
正直言ってかなり引き込まれました。
 
 
長年連れ添った夫婦の関係。
9男3女の子をもうけたふたりで
さえ、時の流れによる気持ちのすれ違いが生じ始めていく。
自分と子供たちのために著作権を守りたい妻のソフィア。
彼女の気持ちは理解できる気がします。
だって理想だけでは生きていけないもの。
“この屋敷では誰も飢えてはいない”
と言うトルストイの言葉も事実だけど…。
 
この作品では、そのタイトル通りトルストイの最期を描いています。
なので、どうして彼がそういう理想を掲げるようになったかという、
詳しいことは分からないんですけど、
その部分が大事なのではなく、とにかく夫婦、男女の愛情を描きたかった気がします。
 
トルストイ夫妻を見守る若き秘書、ワレンチン。
彼はトルストイの思想に心酔していて、彼のもとで働けることに喜びを感じながらも、
夫婦の姿を見るにつけ、何が正しいのか何が理想なのか悩み始めます。
 
長く連れ添ったトルストイ夫妻と若きワレンチンの恋。
この対比も面白いです。
ワレンチンの恋はまだまだ始まったばかりで初々しい。

どんなに偉大な作家でも、
夫婦関係を円満に過ごすことはできませんでした。
 
嫌いではないけど一緒に暮らせない。
彼女が会いたければ拒めない。
ふたりにしか理解できない心情かもしれませんね。
 
 
ソフィアを演じたのはヘレン・ミレン
とにかく素晴らしいです。
激情に駆られる姿や、必死で愛を乞う姿など、いろんな愛情表現を見せてくれます。
こんなに激しく愛されたら、もしかしたらその愛情が重荷になったのかもしれない、
そう思わせるほどでした。
 
偉大なる作家の終焉というより、
一組の夫婦の終焉が心に沁みる作品でした。