悪人

イメージ 1 芥川賞作家・吉田修一の同名ベストセラーを「涙そうそう」の妻夫木聡と「博士の愛した数式」の深津絵里主演で映画化したヒューマン・ミステリー・ドラマ。長崎の漁村で孤独な人生を送り、ふとしたことから殺人者となってしまった不器用な青年と、そんな男と孤独の中で出会い許されぬ愛に溺れた女が繰り広げる出口のない逃避行の顛末を、事件によって運命を狂わされた被害者、加害者それぞれを取り巻く人々の人間模様とともに綴る。共演は満島ひかり岡田将生樹木希林柄本明。監督は「フラガール」の李相日。
 長崎のさびれた漁村に生まれ、自分勝手な母に代わり、引き取られた祖父母に育てられた青年、清水祐一。現在は、土木作業員として働き、年老いた祖父母を面倒見るだけの孤独な日々を送っていた。そんなある日、出会い系サイトで知り合った福岡の保険外交員・石橋佳乃を殺害してしまった祐一。ところが、捜査線上に浮上してきたのは福岡の裕福なイケメン大学生・増尾圭吾だった。苦悩と恐怖を押し隠し、いつもと変わらぬ生活を送る祐一のもとに、一通のメールが届く。それは、かつて出会い系サイトを通じてメールのやり取りをしたことのある佐賀の女性・馬込光代からのものだった。紳士服量販店に勤め、アパートで妹と2人暮らしの彼女もまた、孤独に押しつぶされそうな毎日を送っていた。そして、話し相手を求めて祐一に久々のメールを送った光代。やがて、初めて直接会うことを約束した2人だったが…。(allcinema)
 
2010年
上映時間 139分
 
なぜ、殺したのか。
なぜ、愛したのか。
ひとつの殺人事件。引き裂かれた家族。誰が本当の“悪人”なのか?
 
監督: 李相日 
製作: 島谷能成  服部洋  町田智子  北川直樹  宮路敬久  堀義貴  畠中達郎  喜多埜裕明  大宮敏靖 
        宇留間和基
プロデューサー: 仁平知世   川村元気 
エグゼクティブプロデューサー: 市川南  塚田泰浩 
ラインプロデューサー: 鈴木嘉弘 
原作: 吉田修一 
脚本: 吉田修一   李相日 
撮影: 笠松則通 
美術: 杉本亮 
美術監督種田陽平 
編集: 今井剛 
音楽: 久石譲 
音楽プロデューサー: 岩瀬政雄  杉田寿宏 
主題歌: 福原美穂  『Your Story』
スクリプター: 松澤一美 
ヘアメイク: 豊川京子 
衣裳デザイン: 小川久美子 
照明: 岩下和裕 
装飾: 田口貴久 
録音: 白取貢 
助監督: 久万真路 
出演: 妻夫木聡 清水祐一
    深津絵里 馬込光代
    岡田将生 増尾圭吾
    満島ひかり 石橋佳乃
    塩見三省 佐野刑事
    池内万作 久保刑事
    光石研 矢島憲夫
    余貴美子 清水依子
    井川比佐志 清水勝治
    松尾スズキ 堤下
    山田キヌヲ 馬込珠代
    韓英恵 谷元沙里
    中村絢香 安達眞子
    宮崎美子 石橋里子
    永山絢斗 鶴田公紀
    樹木希林 清水房江
    柄本明 石橋佳男
 
タイトルから、妻夫木くんはもっと非情な男の役なのかしらと勝手に想像していたので、
あまりに静かな役なので、びっくりしてしまいました。
“あの人は悪人なんでしょうね”
事件が終わった後、深津絵里演じる光代が言うんですけど、
何をもって悪人と言うのか、それを問いかけるような作りになっていました。

表面だけで追い掛けると、約束をすっぽかしたり友達に見栄を張ったりする佳乃や
山の中で佳乃を車からほうり出したり、それがもとで彼女が殺されたとしても
笑って友達とふざけあう増尾の方が悪く見えます。
 
それに反して、不遇な家庭環境で育ち、友達もなくて
年老いた祖父と祖母の面倒を見ている祐一には、どこかしら同情すら感じてしまう…。
でもやっぱり、人を殺してしまうという、超えてはいけない一線を越えてしまった祐一を
擁護することはできない。
ただ、彼自身が言っていたように、もっと早く光代に出会っていれば、
違う人生を歩んでいただろうと、容易に想像できます。
気性は荒く、いわゆるキレやすい性格かもしれないけど、
それをコントロールする術を身につけることはできたかもしれない。
 
誰が本当の悪人なのかという問いに対して、それは見方によるのかもしれません。
 
祐一にしても増尾や佳乃は、今どきの若者の姿なのかもしれない。
今の世の中の閉塞感を背負ってしまってて、もがいてる若者たち。
社会が生み出した若者たち。
 
そしてそれに関わる大人。
祐一の祖母。
佳乃の父。
愛する者を突然失くしてしまった姿に胸が詰まります。
なぜ守れなかったのか。
きっとずっと考え続けるのでしょうね。
 
もし自分の愛した人が殺人を犯したと知ったらどうするだろう。
雨の中、車を降りた祐一にクラクションを鳴らした光代。
分別のある大人になってしまったので、
そこで止めてはいけない…! と思ってしまう自分がいました。
でも、待つと言った光代の気持ちは分かるし、
それを聞いた祐一が、そんな人間じゃないと突き放した気持ちも分かる…。
 
本当に互いを大事に思っているんだなと。
悲しい愛情でした。
 
光代側の目線が多い気がしたので、原作を読んでみたいと思いました。
 
話題になった通り、妻夫木君も深津さんも、見事です。
脇を固める樹木希林 柄本明、 
若手の岡田将生 満島ひかり、みな存在感があって素晴らしかったです。