わたしを離さないで

 イメージ 1ブッカー賞作家カズオ・イシグロの同名傑作小説を若手実力派キャストの共演で映画化した異色のヒューマン青春ストーリー。イギリスの田園地帯にひっそりと佇む謎めいた寄宿舎を舞台に、過酷な運命を宿命づけられた少年少女たちが、それを静かに受入れながらも今をひたむきに生きる中で紡がれていく儚くも輝かしい青春の日々を、詩情溢れるタッチで瑞々しく描き出していく。主演は「17歳の肖像」のキャリー・マリガン、「ソーシャル・ネットワーク」のアンドリュー・ガーフィールド、「つぐない」のキーラ・ナイトレイ。共演にシャーロット・ランプリング。監督は「ストーカー」のマーク・ロマネク
 緑豊かな自然に囲まれた寄宿学校“ヘールシャム”。そこは、牧歌的な田園地帯にありながら外界からは完全に隔絶され、徹底した管理が行われている謎めいた施設だった。そんな静かで整然とした環境の中で、幼い頃からずっと一緒に育ってきたキャシー、ルース、トミーの仲良し3人組。やがて18歳となった3人はヘールシャムを卒業し、農場のコテージで共同生活を送ることに。初めて接する外の世界に不安や喜びを感じていく3人。そして、いつしかルースとトミーが恋人になったことで3人の関係も終わりを迎えようとしていたが…。(allcinema)
 
2010年
原題:NEVER LET ME GO
上映時間 105分
製作国 イギリス/アメリ
 
この命は、誰かのために。
この心は、わたしのために。
 
監督: マーク・ロマネク 
製作: アンドリュー・マクドナルド  アロン・ライヒ 
製作総指揮: アレックス・ガーランド  カズオ・イシグロ  テッサ・ロス 
原作: カズオ・イシグロ  『わたしを離さないで』(早川書房刊)
脚本: アレックス・ガーランド 
撮影: アダム・キンメル 
プロダクションデザイン: マーク・ディグビー 
衣装デザイン: レイチェル・フレミング  スティーヴン・ノーブル 
編集: バーニー・ピリング 
音楽: レイチェル・ポートマン 
音楽監修: ランドール・ポスター  ジョージ・ドレイコリアス 
出演: キャリー・マリガン キャシー
    アンドリュー・ガーフィールド トミー
    キーラ・ナイトレイ ルース
    シャーロット・ランプリング エミリ先生
    イゾベル・ミークル=スモール キャシー(子供時代)
    チャーリー・ロウ トミー(子供時代)
    エラ・パーネル ルース(子供時代)
    サリー・ホーキンス ルーシー先生
    デヴィッド・スターン 
    ナタリー・リシャール 
    アンドレア・ライズブロー 
    ドーナル・グリーソン 
 
 
予告を観て、内容と言うよりキャストに惹かれた作品でした。
 
冒頭、世界が長寿になったことのテロップが流れます。
そして始まったのは、のどかな田園風景にある寄宿舎で過ごす子供たちの姿。
 
それはごく普通に見えました。
とても厳しく管理されているのも、寄宿舎ならではなのかなと言うことで…。
学校の外に出ることを堅く禁じられていて、
それを示すように、“恐ろしい”言い伝えがあったりします。
 
子供は純粋なんだけど、登場する大人の何人かの表情が気になります。
どこかしら憐れんでいるような…。
 
そこにあった“秘密”は、担任の先生の告白で明かされます。
その秘密の部分が明かされることで、観ている側にも憐れみが湧くでしょう。
 
 
自分自身がないってどういうことなのか。
想像できない世界です。
 
 
ただ、限りある命を全うしようと言うことであれば、
誰にでも理解できることなのかもしれません。
 
人は、命の終わりを忘れて生きているけれど、
彼らのように“終了”を前提に生きていくなら、もっと有意義に過ごせるのか…。
若者たちが必死で生きようとする姿が、とても悲しい。
 
他人に優しくなんかできない、
自分勝手だとしても、我が儘だとしても、ほしいものは手に入れる。
そう思った少女を誰が責められるか…。
 
青春ストーリーみたいに描いてはあるものの、
形を変えればこれは“SF”なわけで、
似た作品としては【アイランド】【月に囚われた男】あたりでしょうか。
 
近未来といった設定でなく、現代の若者たちでそれを見せることで、
もしかしたら本当にあるのかも、なんて錯覚を起こしかねない雰囲気を出していました。

主要キャスト三人。
それぞれに色合いが明確でした。
一途だけど消極的なキャシー…キャリー・マリガン
いわゆる草食系でひ弱なトミー…アンドリュー・ガーフィールド
強気で積極的なルース…キーラ・ナイトレイ
それに厳格な校長先生を演じた、シャーロット・ランプリングが脇を固めています。
 
刺激的な内容を、敢えてそう描かずにいたことで、
多少眠気は誘うものの、生と死を静かに伝えようとしている作品です。