そして父になる (2013)

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 「歩いても 歩いても」「空気人形」の是枝裕和監督が、「容疑者Xの献身」の福山雅治を主演に迎えて贈る感動の家族ドラマ。ある日突然、6年間育てた息子が病院で取り違えられた他人の子どもだったと知らされた対照的な2組の夫婦が、過酷な決断を迫られ、それぞれに葛藤を繰り返す中で本当に大切なものを学んでいく姿を丁寧な筆致で描き出す。共演は尾野真千子真木よう子リリー・フランキーカンヌ国際映画祭でみごと審査委員賞を受賞、大きな話題となる。
これまで順調に勝ち組人生を歩んできた大手建設会社のエリート社員、野々宮良多。妻みどりと6歳になる息子・慶多との3人で何不自由ない生活を送っていた。しかしこの頃、慶多の優しい性格に漠然とした違和感を覚え、不満を感じ始める。そんなある日、病院から連絡があり、その慶多が赤ん坊の時に取り違えられた他人の子だと告げられる。相手は群馬で小さな電器店を営む貧乏でさつな夫婦、斎木雄大とゆかりの息子、琉晴。両夫婦は戸惑いつつも顔を合わせ、今後について話し合うことに。病院側の説明では、過去の取り違え事件では必ず血のつながりを優先していたという。みどりや斎木夫婦はためらいを見せるも、早ければ早いほうがいいという良多の意見により、両家族はお互いの息子を交換する方向で動き出すのだが…。<allcinema>
2013年 上映時間:120分
6年間育てた息子は、他人の子でした
監督:是枝裕和 製作:亀山千広 畠中達郎 依田巽
エグゼクティブプロデューサー:小川泰 原田知明 小竹里美
プロデューサー:松崎薫 田口聖 アソシエイトプロデューサー:大澤恵
脚本:是枝裕和 撮影:瀧本幹也 美術:三ツ松けいこ 衣裳:黒澤和子 編集:是枝裕和
キャスティング:田端利江 スクリプター:冨田美穂 照明:藤井稔恭 録音:弦巻裕 助監督:兼重淳
出演:福山雅治 野々宮良多   尾野真千子 野々宮みどり                                  真木よう子    斎木ゆかり    リリー・フランキー 斎木雄大                            二宮慶多   野々宮慶多     横升火玄  斎木琉晴                                中村ゆり 高橋和也 田中哲司 井浦新                                            風吹ジュン 野々宮のぶ子     國村隼 上山一至                                  樹木希林  石関里子     夏八木勲  野々宮良輔

待ちに待ってたましゃの作品ですから、先行上映で観てきました。
福山雅治って、“龍馬”や“ガリレオ”でのスマートな役どころが印象的ですが、
今回は子どもの取り違えに関わることになるエリートサラリーマンということで、かなり興味津々。

まず、そのエリートサラリーマンの野々宮良多は、ほんとに嫌な奴だったということ^^;
そして、【そして父になる】というタイトルが、ラストに繋がるんだという感想でした。

高級車に高級マンション。
休日返上で多忙な、夫であり父親。
子どもへの躾も厳しく、習い事やお受験にと期待も大きい。

そんないわゆる勝ち組の良多、みどり夫妻に、
子供の取り違えという、突然災難が降り注ぐ。

それによって夫妻の生活は一変します。

おっとりした息子に、違和感を感じていた良多は、
やっぱり、という思いや、妻への不信はあるものの、
血の繋がった息子への期待もあったりするわけですよね。

そこでこの作品のテーマ。
血の繋がりか一緒に暮らした時間か、ということになるわけです。

登場人物も、それぞれに異なった意見を持っています。

そして、自己表現が苦手な良多の生い立ちも、少しずつ語られます。

描かれているふたつの家族は、かなり極端です。
エリートサラリーマンと町の電気屋さん。
観ていると、子供が暮らす環境だったら絶対に電気屋さん一家の方がよさそうだ、
と思ってしまうんですよね。
お風呂もご飯も寝るのも家族一緒。
笑ったり泣いたり、人のぬくもりを感じる空間ですから。

でも、普通は他人の生活と比べて生きて行くわけではないから、
良多夫妻の子どもとして育つ慶多が、不幸だとは言い切れないと思うんですよね。

自己形成って、やっぱり育った環境の影響が大きいと思うので、
6年かけて培ったものは、
それ以上掛けないと変わっていかないのではないでしょうか。
大人の都合で、今日からは自分たちをお父さんお母さんと呼びなさい、
なんて言われたら、そりゃあ納得できないですよ。

理不尽だ、なんて思えるくらい、入り込んでました。

良多は、今まで当たり前、普通のことだと思っていた
自分の生活や生き方を見直すことになって、
父親として成長していく、そういう姿を描いているから、
ラストの慶多への語りかけに涙してしまうんだと思いました。

淡々と進む物語は、最後のあのシーンへ向かっていたんだと納得です。

慶多がカメラはいらない、と言った理由が分かった瞬間が
一番のお気に入りのシーンです。


結論は出ていません。
でも、ふたつの家族に新しい交流が始まって
慶多も琉晴…血の繋がった息子、も、
ふたりとも、ふたつの家族の子どもとして生きていけたら幸せですよね。

冒頭でも書きましたけど、福山は本当に嫌な奴でした。
見た目がかっこいいだけに、冷たさや奢りが増長された感じです。
書斎にギターが置いてあったり、カメラが趣味だったり、
ファンにとっては嬉しい小道具もありましたけどね(^^)


良多の妻役、尾野真千子
最近NHKのドラマで勢いのある役を観た後だっただけに、
地味で子煩悩な母親を好演していました。
下町の肝っ玉母さん風で良かったです。
そして何よりリリー・フランキーが良い味出してます。
年取ってできた子どもを愛する父親。
良太との対比はお見事でしたし、
この人の存在で、作品が重くならずに済んでいるようでした。
もちろん、子供たちの演技は素晴らしいです。

良多の父親として登場した夏八木勲さんは、これが見納めなんでしょうね。

という脇を固めるキャストも良くて、
ドラマとしては淡泊ながらも、飽きずに観られました。

感想は観る立場で変わるでしょうが、
ひとつずつのシーンが思い出されたり、あのシーンがここへ繋がるんだと思い出したり、
とても良い作品でした。