東ベルリンから来た女

 人々が秘密警察の存在に怯えていた社会主義時代の東ドイツを舞台に、恋人の待つ西側への脱出を準備する一人の女性医師が、医師としての矜持や2人の男の愛に揺れ動くさまを、静謐な中にも緊張感あふれる筆致で描き出した感動のヒューマン・サスペンス・ドラマ。主演は「ベルリン陥落 1945」「ブラッディ・パーティ」のニーナ・ホス。共演にロナルト・ツェアフェルト、ライナー・ボック。監督は、本作でみごとベルリン国際映画祭監督賞を獲得したドイツの実力派、クリスティアン・ペツォールト。
1980年夏の東ドイツ。西側への移住申請が却下され、都会の大病院から片田舎の小さな病院に左遷された女医、バルバラ。秘密警察に監視され、周囲の人間に対しても猜疑心から心を開くことができず、孤立を深めていく。一方で彼女は、西側の恋人ヨルクと秘かに逢瀬を重ね、彼の手引きによる西側への脱出へ向けて着々と準備を進めていた。そんな中、一緒に仕事をする同僚医師アンドレが患者と真摯に向き合い、自らの使命を誠実にこなしていく姿に次第に心打たれていく。バルバラ自身も医師としての誇りを胸に、献身的に患者の治療にあたり、いつしかこの病院に欠かせない存在となっていくのだが…。<allcinema>
2012年 原題:BARBARA 上映時間:105分 製作国:ドイツイメージ 1
東と西。 嘘と真実。 自由と使命。     その狭間で揺れる、愛。
監督:クリスティアン・ペツォールト
製作:フロリアン・コールナー・フォン・グストルフ  ミヒャエル・ヴェバー
製作総指揮:マイケル・ウェバー
脚本:クリスティアン・ペツォールト
撮影:ハンス・フロム
編集:ベッティナ・ボーラー
音楽:シュテファン・ヴィル
出演:ニーナ・ホス バルバラ           ロナルト・ツェアフェルト アンドレ     ライナー・ボック シュッツ         ヤスナ・フリッツィ・バウアー        ステラ マルク・ヴァシュケ ヨルク

台詞が少なくて、設定や状況を想像しなくてはいけません。
主人公のバルバラはいったい何者?

どうやらお医者さんらしい。
…白衣を着ているし、病院に勤めている。

転勤してきたらしい。
秘密警察の監視下の置かれているので、危険人物のようだ。

秘密のやり取りをする相手がいるようだ。
それが西側にいる恋人だと分かって、その恋人がこちら来て一緒に暮らそうと誘う。
なるほど、そういうことか。

そんなバルバラは、必要以上に他人と関わらないようにしているけど、
医師としては力があって、同僚の医師・アンドレからも頼られる存在になっていきます。
田舎の小さな町の病院だけど、アンドレは確実な仕事をしている。
そんな姿に、バルバラは少しずつ影響を受け始めていきます。

西側への亡命を考えていたバルバラは、
誰とも親しくならず、触れ合わず、医師としてもそこそこに、
そんな毎日を送っていました。
でも、病院にはいろんな患者がやってきて、
バルバラもどんどん医師としての本能というか、意識や責任感が高まっていくんですよ。

それは患者との触れ合いだったり、
医師のアンドレとの触れ合いだったり…。

最終的にバルバラが選んだのは、一人の女性としての人生より
医師としての人生だったわけで、
それが彼女を幸せするのか不幸せをもたらすのか…。

法を犯してまで患者を救ったことで、
心を満たされるだろうけど、秘密警察は黙ってはいないだろう。
そんなラストでが、
あまり絶望的な気持ちにならなかったのは、
バルバラの凛とした姿を見たからかもしれません。