それでも夜は明ける (2013)
南北戦争前の19世紀前半に実在した黒人男性ソロモン・ノーサップの自伝を映画化した衝撃の伝記ドラマ。ニューヨークで普通の市民として自由な生活を送っていた主人公が、ある日突然何者かに誘拐され、南部の農園に売り飛ばされた末に体験する想像を絶する奴隷生活の行方を描く。主演は「キンキーブーツ」「ソルト」のキウェテル・イジョフォー、共演にマイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ、ポール・ダノ、ブラッド・ピット。監督は「SHAME -シェイム-」のスティーヴ・マックィーン。
ニューヨークに暮らす音楽家のソロモン・ノーサップは生まれながらの自由黒人。妻子とともに、白人を含む多くの友人に囲まれ、幸せな日々を送っていた。だがある日、2週間の興行に参加した彼は、興行主に騙され拉致された末、奴隷市場に送られてしまう。自分は自由黒人だとどれだけ必死に訴えようが、無駄な抵抗だと悟るのに時間はいらなかった。そして名前も人間としての尊厳も奪われ、奴隷として大農園主フォードに買われていく。それでも農場では、その有能さを認められ、温厚なフォードに気に入られるソロモンだったが…。<allcinema>
2013年 原題:12 YEARS A SLAVE 上映時間:134分 製作国:アメリカ
監督:スティーヴ・マックィーン
製作:ブラッド・ピット デデ・ガードナー ジェレミー・クライナー ビル・ポーラッド スティーヴ・マックィーン アーノン・ミルチャン アンソニー・カタガス
脚本:ジョン・リドリー 撮影:ショーン・ボビット
プロダクションデザイン:アダム・ストックハウゼン
衣装デザイン:パトリシア・ノリス
編集:ジョー・ウォーカー 音楽:ハンス・ジマー
出演:
●キウェテル・イジョフォー ソロモン・ノーサップ/プラット
●マイケル・ファスベンダー エドウィン・エップス
●ベネディクト・カンバーバッチ フォード
●ポール・ダノ ジョン・ティビッツ ●ポール・ジアマッティ フリーマン
●ルピタ・ニョンゴ パッツィー ●サラ・ポールソン エップス夫人 ●ブラッド・ピット バス ●アルフレ・ウッダード ショー夫人
2013年アカデミー賞
■ 作品賞
■ 脚色賞 ジョン・リドリー
本年度アカデミー賞作品賞を受賞した作品ですから、早速観てきました。
こちらの情報番組で、おすぎさんが興奮してオススメしておりました。
観るべきです!と…。
映画に何を求めるかによって異なるので、万人にお勧めするかどうかは別として、
個人的には観てよかったと思っています。
ただ、人種差別を描いた作品なので、そういうものを求めない人もいるからですね~^^;
でも、知らないことを知る手段としては、こういう作品に出合えることが喜びだったりします。
今回知ることができたのは、自由黒人という人たちがいたということ。
「黒人=奴隷」という図式しか知らなかったので、驚きでした。
白人と同じように暮らすことができる黒人ソロモンが、誘拐され売られて行き、
12年間奴隷として生き続けた話です。
事実に基づいていると言うから、本当に胸が痛くなります。
拉致問題は、今でも取りあげられることなので、もし自分が、と思うと溜まりませんね。
突然姿を消した夫、父親の家族の想いはどんなだっただろう。
その部分は描かれていませんけど、やはり辛く悲しい12年だったはずです。
当時の奴隷が、どんな風に扱われていたか、
過去にもそういう作品を観たことがあったので想像できますけど、
それでもやはり目の当たりにするのは苦しい…。
ソロモンが必死で生き抜こうとしたことは、端々で感じることはできるんですけど
あまりにも静かに進んでいくので、
生き抜くための強い想いというか、信念みたいなもの、
それに加えて絶望感、
が、少し希薄な感じは受けました。
それが狙いだったのかもしれないけど…。
家族の辛さや悲しみなどもあると、
ソロモンに救いの手が伸びた瞬間や、家族の再会などでの解放感というか
爽快感などに結びついたのではないかなと思いました。
事実を事実として淡々と描いていて、そういうことがあったと知ることはできただけに、
観る側に委ねられた作りになっていると感じました。
綿花農園の農園主の非道さや、その妻の冷酷さなどは、
同じ人間に対してそこまでできるのかと思わずにはいられませんでした。
人間ではなくて家畜、だったなんて、そんな世界は異常としか言いようがありません。
その農園主を演じたマイケル・ファスベンダー。
いや~~。主役が霞むほどの印象を残す演技です。
ほんとに嫌な奴でした。
ただ、鞭打つ側にも苦悩がある、という台詞があるんですが、
個人的には、彼にはそういう部分が感じられたんですよね。
病的な感じ、というのでしょうか。
このパッツィーという役、一言で表現しにくい人物です。
奴隷なんだけど農園主に気に入られている。
慰みものにされる辛さもあるけど、どこか媚びてる感じもある。
それが生きるための手段なのかと思えば、生きるのが辛いから殺してくれと頼んだり…。
ソロモンが去った後、彼女がどうなったか、考えるとやはり辛いですね。
製作に名を連ねているブラッド・ピットは、役者としても登場。
あらま~。美味しいとこ持って行くのね!
という役でした。
なんてことはさておいて、ソロモンがブラピ演じたカナダ人に出会ったのは、
神の御心なんでしょうか。
奇跡、というか、ソロモンの生への執着のなせる業か…。
劇場を後にした私の背後で、ご主人が奥さんに話していました。
「良かったね、今の時代に生きていて」
その言葉に尽きるかもしれません。