チョコレートドーナツ (2012)

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 1970年代のアメリカを舞台に、世間の無理解と葛藤する一組のゲイ・カップルが、親に見放されたダウン症の少年と一つの家庭を築き、家族としての愛情と絆を育んでいくさまと、やがて少年を守るため、理不尽な差別や偏見に対して決然と立ち上がる姿を描いた感動のヒューマン・ドラマ。主演は「アニバーサリーの夜に」、TV「グッド・ワイフ」のアラン・カミング、共演にギャレット・ディラハント、アイザック・レイヴァ。監督は俳優出身のトラヴィス・ファイン。監督作はこれが日本初紹介となる。
1979年、アメリカ。ゲイのルディはシンガーを夢見ながらも、口パクで踊るショーダンサーとして働く日々。そんな彼にある日、ゲイであることを隠して生きる検事局の男性ポールが一目惚れ、2人はたちまち恋に落ちる。一方で、ルディはアパートの隣に暮らすダウン症の少年、マルコのことを気に掛ける。母親は薬物依存症で、マルコの世話もまともにしていなかった。そしてついに、母親は薬物所持で逮捕され、マルコは施設行きに。見かねたルディとポールはマルコを引き取り、面倒を見るのだったが…。<allcinema>

2012年 原題:ANY DAY NOW 上映時間:97分 製作国:アメリ
僕たちは忘れない。
ぽっかりと空いた心の穴が愛で満たされた日々――。

監督:トラヴィス・ファイン
製作:トラヴィス・ファイン クリスティーン・ホスステッター・ファ
イン チップ・ホーリハン リアム・フィン
脚本:トラヴィス・ファイン ジョージ・アーサー・ブルーム
撮影:レイチェル・モリソン
プロダクションデザイン:エリザベス・ガーナー
音楽:ジョーイ・ニューマン
出演:
アラン・カミング/ルディ・ドナテロ
ギャレット・ディラハント/ポール・フラガー
アイザック・レイヴァ/マルコ・ディレオン
フランシス・フィッシャー マイヤーソン判事
グレッグ・ヘンリーランバート
クリス・マルケイ/州検察官ウィルソン
ドン・フランクリン/ロニー・ワシントン(黒人の弁護士)
ジェイミー・アン・オールマン/マリアンナ・ディレオン(マルコの母)
公開終了間近になり、ほぼ断念してたのですが、
たまたま時間が合ったことと、割引券ゲットで日曜に出かけることができました。

良い作品らしい、号泣するらしい。
ハンカチを手元に置いての観賞でした。
残念ながらというか、号泣することはなく、とても冷静に観賞しました。

1970年代のアメリカ。
ゲイのルディは、隣の部屋に住む麻薬で母親が捕まったダウン症の少年マルコを引き取り、
恋人となったポールと三人で暮らし始めますが、
ゲイという差別や偏見から引き離されてしまいます。
前半は、ルディとポールやマルコとの出会いが描かれていて、
想像の域を超える展開はありませんでした。

ところが、ふたりがマルコを引き取るために奔走する後半は、
かなり力が入りました。
ルディはゲイであることを隠してはいなかったけど、
ポールはそれが明らかになると仕事を首になり、
ゲイのカップルだから子どもに悪影響がある。
だから親となるにはふさわしくない、と言われてしまいます。
彼らにしてみれば、いわれなき差別、だったけど、それが現実。

差別や偏見と闘う法廷物としても、充分に観られました。
それまで及び腰だったポールが人が、変わったように力強く、
ただマルコにとって一番いい環境を与えたいと言う必死に訴えたり、
検事の、聞くに堪えないいやらしい質問とか、最後に登場するポールの元上司とか…。
見応えがありました。

97分と短めなので細かいことが省かれていて、
なぜルディがマルコを引き取ろうと思ったか
その理由は想像するしかないのですが、
差別を受け続けたルディだから、愛情に飢えたマルコを放ってはおけなかった。
それだけで充分じゃないかと思います。

世間に認められない人たちが、精いっぱい生きようとした。
それだけなのに、法律はそれを認めようとはしない。
法律に抗えないルディ達の悲しみや痛みは、
シンガーを目指すルディの、その歌声で推し量ることができます。

ルディを演じたアラン・カミングの歌声の素晴らしいこと!
というか、彼が発するパワーに圧倒され続けました。
アラン自身バイセクシャル同性婚をしているそうで、
ある意味演技を超えた演技だったかもしれませんが、
冒頭から惹きつけられました。
本当に素晴らしかったです。

他人には偽善に思えたかもしれない彼らの行為は、
純粋な温かい愛情だったんですよね。
一緒に暮らした1年を、ルディの歌に合わせてビデオで振り返るシーンで
それを知ることができます。
心に染入る三人の笑顔でした。


ネタばれ反転します。
マルコが望んでいたハッピーエンドは待っていませんでした。
母親の元で暮らすマルコには、そこがhomeではなかった。
homeを、ルディやポールを探してさまよった三日間。
たどり着けなかった、あまりにも悲しい死でした。
そしてそれを、当時の判事たちに知らせるポールは、
どんな思いだったのでしょうか。


法律は弱者を守るためにあるのではないのか。
あまりの結末に、むなしさを感じずにはいられませんでした。
でも、人は決して平等ではない、世間は理不尽なもの、
この年まで生きてると、そういうことを受け入れてしまう自分もいて、
その辺りが冷静に観てしまった原因でしょうか。

ルディの、ただ一途に前を向いて戦う姿は眩しいです…。

そしてラストのルディの想いを込めた歌には、ただただ感動でした。