紙の月

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 NHKでもドラマ化された角田光代の同名ベストセラーを「トニー滝谷」「オリヲン座からの招待状」の宮沢りえ主演で映画化したヒューマン・クライム・サスペンス。ごく平凡なアラフォー主婦が、若い男との出会いをきっかけに巨額の横領に手を染めてしまう欲望の暴走とその顛末を丁寧に描き出す。共演は池松壮亮大島優子小林聡美。監督は「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」「桐島、部活やめるってよ」の吉田大八。
 1994年。エリート会社員の夫と2人暮らしの主婦、梅澤梨花。銀行の契約社員として外回りの仕事を任されるようになった彼女は、顧客の信頼も得て、上司からも高く評価される。しかし家庭では、夫との冷めた夫婦関係に空しさを抱き始めていた。そんなある日、外で顔見知りの大学生・平林光太から声を掛けられる。彼は、梨花の顧客・平林孝三の孫だった。これをきっかけに、若い光太との逢瀬を重ねるようになり、久々に気持ちが浮き立つ梨花。ある時、化粧品売り場で持ち合わせが足りないことに気づいた彼女は、客から預かった金に手を付けてしまう。すぐに戻すから大丈夫と自分に言い聞かせる梨花だったが、それが転落へと向かう暴走の始まりだった。<allcinema>

2014年 上映時間126分
最も美しい横領犯。
監督:吉田大八
原作:角田光代 『紙の月』(角川春樹事務所刊)
脚本:早船歌江子
音楽:little moa 小野雄紀 山口龍夫
音楽プロデューサー:緑川徹
出演:
池松壮亮/平林光太
大島優子/相川恵子
小林聡美/隅より子
田辺誠一/梅澤正文
近藤芳正/井上佑司
石橋蓮司/平林孝三

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本当にちょっとしたことをきっかけに、人生なんて変わっていくものなんだと、
どんどん深みにはまっていく女性のお話。

夫の転勤で、それまで埋もれていた感情が湧き出し、自己主張始める。
だからと言って、年若い青年と恋に落ちるか~と思えて、
そこはかなり不自然さを感じたけど、止められない気持ちは理解できるかな。

仕事がら多額の現金を手にすることに慣れてしまい、
挙句、自分のお金と人様のお金の区別がつかなくなる…。
これは絶対ダメでしょ。という範疇になっていく。

自宅にパソコンやプリンターを買い込んで、偽の証券を作るシーンは
もう狂気としか言いようがなかった。

一つの嘘から始まった転落。
そこに彼女が過去に、寄付をする為に盗むという行為を働いたことが分かると、
彼女にとっての善悪の区別が、普通の常識から外れていたんだと思わされます。
このあたりの解釈が難しい。

結局、本編では子供の頃の慈善活動の相手と思われる男性と会い、
警官から逃れるように姿を消す、というところで終わっています。
結果オーライとはいきません。
自分のしたことの後始末はつけないと…。
倫理的に、こういう結末は好みではありません。

宮沢りえはもちろんなんだけど、
彼女の先輩を演じた小林聡美が良かったですね~。
仕事に向き合う姿勢が梨花とは対照的で、潔い。
先輩としては煙たいかもしれないけど、人としては絶対こっちです。
そして大島優子が演じた、ちゃっかりした後輩も良かった。
なんだかんだと言って、あっさり寿退社しちゃって。
そういう二人に挟まれて、梨花の生き方は身勝手だと思ってしまいました。