武士の一分

三村新之丞(木村拓哉)は近習組に勤める三十石の下級武士。
城下の木部道場で剣術を極め、藩校で秀才と言われながらも、現在の務めは毒見役。
不本意で手応えのないお役目に嫌気がさしながらも、美しく気立てのいい妻・加世(檀れい)、
父の代から仕える中間の徳平(笹野高史)と、つましくも笑いの絶えない平和な日々を送っていた。
そんなある日、新之丞の身を、そして心も揺るがす事変が起きた。
藩主の昼食に供された貝の毒にあたったのだ。
新之丞は、加世と徳平の必死の看病で辛くも一命を取り留めたが、失明してしまう。
そして平凡だが幸せだった二人に、次々と試練が襲い始める・・・。

賛否両論あるようです。
でも、木村拓哉という人物に興味があるので、今回はぜひ観ようと思って出かけました。

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木村拓哉主演作ではありますが、いやいやどうして・・・。
この作品は加世役の壇れいと、中間・徳平役の笹野高史がいい!
とにかく壇れいの演技に引き込まれて前半が進んでいきます。

瀕死の床にある新之丞に口移しで薬を飲ませ、
その後新之丞の胸に顔をうずめるシーンは、愛情の深さを感じさせました。
また、死のうとする新之丞を止めるシーン。
『みなし子だった私をあなたのご両親が引き取ってくんなはったときから、
 あなたの嫁になることがただひとつの望み。
 あなたのいなくなった暮らしなど考えられましね。死ぬならどうぞ。
 私もその刀ですぐ後追って死にますさけ』
そして最後のシーン。
・・・これは書いてしまわずに観ていただきましょう。
ここでは心を強く動かされました。涙がこぼれました。
違和感なく時代劇に溶け込んでいるんです。
顔立ちも、時代劇向きな気がしました。

目が見えなくなってからの木村拓哉の演技には、迫力を感じました。
観ている側も【木村拓哉】ではなくて、《新之丞》として捉えていけた気がします。

全編を通して、中間の徳平が飄々とした演技で和ませてくれました。
それ以外の登場人物も、大物達がそれぞれの役を渋く演じてたように感じました。
四季を感じる映像も綺麗でした。
さすが山田洋次監督と言えるのではないでしょうか。
ストーリーは、ありがち、でしょう。
決して奇抜な話ではありません。
ストーリーを楽しむと言うより、役者さんの演技に注目する作品でした。
でも静かに心に残る作品です。

さて・・・。ここからは【木村拓哉】論を少々・・・。
彼はあまりに整った顔立ちで、やはり役者としてはマイナスなのかもしれないですね。
下級武士なんて汚れ役は、およそ似合いません。
これまでだったら想像外の役でしょう。

けれども彼もすでに34歳。
過去のトレンディドラマからの脱皮が、課題ではないでしょうか。
いつまでも【木村拓哉】のオーラを出しての演技では飽きられてしまいます。
何をやっても【木村拓哉】だから許されるのではなくて、
幅広く登場人物を演じる、なりきることを求めたいですね。

役者としてやっていくには良いきっかけだったと思います。
さて、今後どんな方向で行くんでしょう。
期待して観ていきたいです。