愛されるために、ここにいる

人生に疲れた中年男が、ふとしたことから通い始めたタンゴ教室で若い女性と出会い、互いに秘めた感情が昂揚していくさまを繊細なタッチで綴る静かな愛のドラマ。主演は「読書する女」のパトリック・シェネ、共演に「灯台守の恋」のアンヌ・コンシニ。監督はこれが長編２作目の新鋭ステファヌ・ブリゼ。
　50歳を迎えたジャン＝クロードは、長年務めてきた裁判所の執行官という憎まれ仕事にも嫌気がさし、高齢の父や別れた妻との間の息子との関係にも問題を抱え、人生に疲れ果てていた。ある日、医者から運動を勧められたジャン＝クロードは、以前から気になっていたタンゴ教室に通ってみることに。彼はそこでタンゴを習う若い女性フランソワーズと出会う。やがてレッスンを通じて次第に打ち解け合い、互いの気持ちが近づいていくのを感じる２人だったが…。(allcinema)




変わらない毎日。気づいたら一人ぼっち。
あの日、あのとき、君とタンゴに出会った。


2005年　フランス製作

とてもシンプルな大人のラブストーリーでした。

主役は50歳の…もうすぐ51歳になるジャン・クロード。
淡々と仕事をこなし、週に一度は高齢で施設にいる頑固な父親を見舞う…。
そんな暮らしの中で、医師から健康のために運動を、と言われてタンゴ教室に通いい始める…。

ジャン・クロードを表すように、物語自体も淡々と日々を綴っていきます。

タンゴ教室で出会ったのは、昔馴染みのフランソワーズ。
最初は誰か分からなかったのだけれど、面影がある！と気がついてからは
自分だけの世界にいたジャン・クロードが、フランソワーズをその世界に入れてしまったのでした。

そして急速に魅かれあうふたり…。

結婚を前にしたフランソワーズには、いわゆるマリッジブルーな状態だったのか、
不器用なジャン・クロードの人柄に興味を持ってしまったのです。

不器用な男と女。

自分の気持ちを相手に伝えられずに、それぞれ自分の世界へ戻ってしまいます。

タンゴを踊るふたり。
言葉ではなく、踊ることで想いを告げようとしているようでした。

愛情を現すようなシーンは…ベッドシーンなどは一切ないのですが、
タンゴを踊るふたりからは溢れるほどの愛情を感じました。

これでふたりに新しい未来が待っているのかは分かりませんが、
ひと時、自分に正直になれたことは確かでしょう。

ジャン・クロードと父親の関係も描かれていて、ここにも不器用な人間がいる、と思えるシーンもありました。
言葉に出せなくて、素直になれなかったお父さん…。
現実でも、親子の関係ってこんな感じなのかなと思って胸が熱くなりました。

ジャン・クロードを演じたパトリック・シェネの、感情を抑えた演技と、
タンゴを始めとする音楽が素晴らしい作品です。

原題を直訳すると、愛されるためにここにいるわけじゃない、となるらしいです。

そういいながら、心では愛されたい、愛したいと想い続ける男と女のお話です。