ヒトラーの贋札


イメージ 1第二次世界大戦中、ナチス・ドイツ英米経済の混乱を企図して大量の贋札製造を行った“ベルンハルト作戦”の裏に秘められた感動の実話を、強制的に贋札作りに従事させられたユダヤ系技術者の視点から描いた戦争サスペンス・ドラマ。実際に強制収容所で作戦に関わったユダヤ人生存者アドルフ・ブルガーの自伝『ヒトラーの贋札 悪魔の工房』をベースに、フィクションを織り交ぜスリリングかつドラマティックに綴る。監督は「アナトミー」のステファン・ルツォヴィツキー。
 第二次世界大戦の最中、ナチスはイギリスの経済を混乱に陥れるため精巧な贋ポンド札の製造を計画する。この“ベルンハルト作戦”のため、ザクセンハウゼン強制収容所には、世界的贋作師サリー、印刷技師ブルガー、美校生のコーリャなどユダヤ系の技術者たちが集められた。収容所内に設けられた秘密の工場で、ユダヤ人でありながら破格の待遇を受け、完璧な贋ポンド札作りに従事することになったサリーたち。しかし彼らは、自らの延命と引き替えに同胞を苦しめるナチスに荷担するジレンマに次第に葛藤と苦悩を深めていく。(allcinema)


原題:DIE FALSCHER THE COUNTERFEITER

2007年 ドイツ/オーストリア 製作作品


完璧な贋札。
それは俺たちの命を救うのか。
それとも奪うのか──


アカデミー賞:2007年外国語映画賞





第二次世界大戦ナチスの話というのは、今までの何本か観てきたけれど、
これはまた違った趣向の作品でした。


“ベルンハルト作戦”という特殊な作戦のため、その収容所では待遇が良く、
そこでの生活を守りたい、生き延びたいと思うユダヤ人たちの姿が描かれています。

その中の、世界的贋作師サリーが中心となります。

彼は、生き延びるために自分の才能を最大限に利用しようとします。
そのサロモン(サリー)に反目するのは、ナチには手を貸せないと仕事をさぼるブルガー。
ブルガーの強い信念は伝わって来るのですが、
「きょうの銃殺より明日のガス室だ」というサロモンの死への恐怖も伝わってきます。
理不尽な死を、誰も望みはしません。
そういう気持であっても、避難はできないでしょう。


原作者のブルガー氏は、
自分だけでなく、仲間の命を危険にさらすような「サボタージュ行為」はしてはいないそうで、
脚色されているようです。


サロモンと同じ美学校出で、結核にかかったコーリャ。
かわいがっていただけに、その死にサロモンが声を殺して泣くシーンは痛みが伝わってきました。



終戦後、サロモンがギャンブルをしていても少しも楽しそうでない姿が印象的です。
とても虚ろで、きっと収容所でのことが思い出されていたのでしょう。
たくさんの犠牲があっての“今”なのだと…。


戦争を扱った作品を観るたび、
戦争のない世界を望み、平和な時代が続くことを願います。