ブラインドネス (2008)

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ナイロビの蜂」のフェルナンド・メイレレス監督が、ノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴの小説『白の闇』を国際色豊かなキャスト陣で描いたパニック・サスペンス。ある日突然失明する謎の病気が感染症のように世界中に蔓延していく中、隔離施設に閉じ込められた発症者たちが極限状況で露わにしていく様々な人間の本性を寓話的に描き出す。主演は「エデンより彼方に」のジュリアン・ムーア。日本からも「CASSHERN」の伊勢谷友介と「寝ずの番」の木村佳乃が参加。
 ある日、車を運転していた日本人の男が突然視力を失い、目の前が真っ白になる事態に見舞われる。しかし、彼を診た医者によれば、眼球に異常はなく原因は不明だった。その後、同様の患者が各地で続出、混乱が広がっていく。感染症の疑いが濃厚となり、政府は緊急隔離政策を発動し、発症者を片っ端からかつて精神病院だった隔離病棟へと強制収容していく。最初の患者を診た医者もやはり失明し、隔離病棟送りとなるが、その際、医者の妻は自分も失明したフリをして夫に付き添うのだった。彼女だけは、なぜか失明を免れていたのだ。こうしてただ一人、目が見えていながら隔離病棟内に入り込んだ医者の妻は、やがて想像を絶する惨状を目の当たりにするのだが…。(allcinema)


BLINDNESS

日本/ブラジル/カナダ製作作品




目が見えなくなるという、とんでもない感染症が広がって、
人々はパニックに陥り、国家は機能停止状態となり…。
予告編を観て、そんな内容を想像していたのですが、
実はその辺りは詳しく描くことなく、失明した人たちが収容される隔離病院での人間模様が描かれていました。


閉鎖された空間で、極限状態に陥った人間の姿を描いた作品には、
目新しいところでは【ミスト】もあったりしますが、
こちらもよく似ています。

ただ、この作品では“目が見えなくなる”というキーワードがあります。

見えているときはそれが当たり前として生活していますけど、
見えなくなると、生活が一変してしまうんです。

想像できますか?
自分の姿に関心が無くなって、裸でも構わなくなったり、
周囲に関心が無くなって、片付けなくなったり…。
そんな状態を…。



その上、道徳とか法律といったものもなくなってしまうのです。
そうなると力関係がはっきりして、“王”だと名乗る男も出てきて、
隔離病院を管理下に置こうとします。

そこでの要求は、想像できましたね。
人間って、無秩序になると本能だけになってしまう、
動物になってしまうんですね…。


皆見えない中でたった一人見える“医者の妻(ジュリアン・ムーア)”が、
その無秩序と闘うシーンは、伏線をはっていて納得でした。


教会で見た目隠しをしたキリスト像に、何か意味があるのかとちょっと深読みしたり、
見えないことで連帯感を感じた人たちに対して、
ずっと見えていた医者の妻は、もしかしたら孤独かもと思ったり、
見方は様々あると思いました。


“医者の妻”がスーパーの地下へ降りて行くシーンでは、
真っ暗になって何も見えなくなるシーン。
“最初に見えなくなった男”が見えていくシーン。
そして最後のシーン。
視覚的な映像も多くあって、見えないことを少しだけ体験します。


予想とはかなり違ってましたけど、見えることの有り難さを感じた作品でした。
目が見えなかったのは一体何だったの?なんてことは考えないことにしましょう。

もしかしたら、傲慢になった人間たちへの神の戒めなのかも…。


エンドロールに“First Blind Man”とクレジットされていた伊勢谷友介など、
登場人物に名前がないのもユニークでした。