ディファイアンス(2008)

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 「ラスト サムライ」のエドワード・ズウィック監督、「007/カジノ・ロワイヤル」のダニエル・クレイグ主演で実在したユダヤ人兄弟の知られざる功績をクローズアップした感動の戦時ドラマ。第二次世界大戦下、東欧ベラルーシにもナチスの脅威が迫る中、逃げ惑う1200人もの同胞を救ったビエルスキ3兄弟の英雄的な抵抗活動を緊迫感溢れるタッチで描く。共演に「オーメン」のリーヴ・シュレイバーと「リトル・ダンサー」のジェイミー・ベル
 1941年、ドイツ軍に侵攻され、ナチス親衛隊と地元警察によってユダヤ人狩りが始まったベラルーシ。両親を殺されたトゥヴィア、ズシュ、アザエルのビエルスキ兄弟は森の中へ逃げ込み、生きる手立てを模索していた。すると彼らの周りにはやがて、逃げ惑っていた同胞のユダヤ人が次々に合流してくるのだった。またそんな中、トゥヴィアは両親を殺した犯人を突き止め、復讐を果たす。日に日にユダヤ人が集まり、食料や武器を調達しながら共同体を築いていくトゥヴィアたち。やがて、彼らは“ビエルスキ・パルチザン(民衆による非正規軍)”を名乗り、銃を手にドイツ軍への抵抗を始めるのだが…。(allcinema)


DEFIANCE

監督:エドワード・ズウィック
音楽:ジェームス・ニュートン・ハワード




俺たちは動物みたいに追われている。でも俺たちは動物じゃない。
可能な限り“人間らしく”自由に生きるために、選ばれた存在なのだ。
自由な日々を手に入れることが、俺たちの勝利。
真の生を勝ち取るためにたとえ死ぬことがあっても、俺たちは少なくとも“人間らしく”死にたい。


【007/慰めの報酬】を観た時の予告編で観たのですが、
気になる俳優となったダニエル・クレイグでなければ、きっと後回しになっていた作品でしょう。
戦場のピアニスト】は観たものの、未だに【シンドラーのリスト】は手が出ないまま…。

戦争を扱ったものはやはり楽しく観られるわけがないので、気持が安定してないとしんどいんですよね。

そう思いつつも、やはり観てよかったと思える作品でした。


元々両親の仇打ちで始まった“ディファイアンス”が、いつしか生きるための“ディファイアンス”に代わっていく。
そんなビエルスキ兄弟の救出劇の物語です。

1941年8月。リピクザンスカの森に逃げ込んだのを始まりとして、
1941年10月。ペレラズの森。
1941年12月。ナリボッカの森。
と移動しながら、最後には村と呼ぶにふさわしい共同体を作り、病院や学校、裁判所ができるまでに大きくなっていた。彼らはこの場所を「森のエルサレム」と名づける。
厳しい環境ながらも、ベラルーシの森では人々は恋をし、結婚をし、子供を産む日々が存在していた。
そして現在、ビエルスキ兄弟によって救われた1200人の子孫たちは数万人にも及んでいる。


それぞれの場所で、様々なドラマがあります。
東欧のベラルーシという国は極寒の地です。
冬の寒さは想像を絶する状況でした。
トゥヴィアが指揮官となり、生きるためにいくつものルールを決めます。

「今日からは、失った暮らしを取り戻す。この国でユダヤ人が自由をもてるのはここだけだ」

トゥヴィアの言葉に、皆ついていきます。
それでも、時にはその信頼が揺らぎそうになるのですが、トゥヴィアの行動は揺るぐことがありませんでした。

当初、いくら同じユダヤ人だからといっても、すべてをトゥヴィアに頼る人たちを疑問視したのですが、
そういうことをトゥヴィアは考えないのです。
弟のゾシュには、綺麗事ばかり言っているように思えたのでしょう。
いつしか兄弟は道を分かつことになります。

揺るぎないトゥヴィアが、絶望で身動きできなくなったとき、兄トゥヴィアと仲間を救ったのは
末の弟・アザエルでした。

「やればできる。神はモーセのために紅海を裂いた。僕らに奇跡はない!奇跡は自分たちで起こす!」

そうして河を渡り始めた絵は、本当に海が割れた【十戒】のようでした。


指揮官として常に先頭に立つトゥヴィアは、弟たちに支えられていたんだというシーンが何度も出てきます。
決してヒーローだったわけじゃない。
戦争が始まるまでは普通の農民や商店主だった兄弟です。
強さも弱さも見せながら、仲間の信頼を得ていく姿に感動を覚えました。

「神は君を下された」
その言葉がすべてを語っています。


戦争の陰惨なシーンはそれほど多く描かれてはいません。
確かに、ドイツ軍への憎しみの余りとった行動などは辛いシーンでしたが…。

そういうことより、生きることへの執着、仲間への愛情という、
戦争の中でも普通に生きようとすることが描かれています。


重く苦しい中でも、兄弟三人にも新しい妻との出会いがあったり、
新しい命の誕生に希望を見出したりと、清々しささえ感じることができました。


ダニエル・クレイグは、その強さも弱さも見せるトゥヴィアを好演しています。
アザエルの妻・ハイアが、2010年公開予定のティム・バートン監督の
「不思議な国のアリス」の主演に抜擢された女優さんだと知ってびっくり。




派手な映画ではないので、お客さんいるかな~と思っていたのですが、
TOHOデーで土曜日で、客席はいつもより埋まっていました。
客層は高めでしたけどね。