チェンジリング(2008)

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クリント・イーストウッド監督がアンジェリーナ・ジョリーを主演に迎えた感動のミステリー・ドラマ。1920年代のロサンゼルスで実際に起きた事件を映画化。5ヶ月の失踪ののち保護され帰ってきた幼い息子が別人だったことから、本物の我が子を取り戻すため、捜査ミスを犯した警察の非道な圧力に屈することなく真実を追及していくシングルマザーの長きに渡る孤独な闘いを綴る。
 1928年、ロサンゼルス。シングルマザーのクリスティン・コリンズは、9歳の息子ウォルターを女手一つで育てる傍ら電話会社に勤め、せわしない日々を送っていた。そんな彼女はある日、休暇を返上してウォルターをひとり家に残したまま出勤する羽目に。やがて夕方、彼女が急いで帰宅すると、ウォルターは忽然と姿を消していた。警察に通報し、翌日から捜査が始まる一方、自らも懸命に息子の消息を探るクリスティン。しかし、有力な手掛かりが何一つ掴めず、非情で虚しい時間がただ過ぎていくばかり。それから5ヶ月後、ウォルターがイリノイ州で見つかったという朗報が入る。そして、ロス市警の大仰な演出によって報道陣も集まる中、再会の喜びを噛みしめながら列車で帰ってくる我が子を駅に出迎えるクリスティン。だが、列車から降りてきたのは、ウォルターとは別人の全く見知らぬ少年だった…。(allcinema)


どれだけ祈れば、
あの子は帰ってくるの──?


監督:クリント・イーストウッド
クリスティン:アンジェリーナ・ジョリー
ブリーグレブ牧師:ジョン・マルコヴィッチ



話題作を観て来ました。
観終わって、2時間以上の時間が経っていることに驚いたほど、長さを感じることはありませんでした。
(142分という長さです)


事実だからでしょうか。
とても淡々と進んでいくようで、物語の深刻さは伝わってきてもとても客観的に観ている自分に気がつきました。

いつものごとく予告とちょっとした知識だけで観始めたので、その内容にまず驚かされました。

突然息子がいなくなり、5ヵ月後に帰って来たらそれはまったくの別人だった。
じゃあ本物の息子はどこに?という単純な子供捜しのミステリーなのかと思っていたので、
息子探しから、その当時の警察組織の腐敗ぶりを描くことへ進んでいくことへ驚きました。

「息子ではない!」と訴え続ける母親に、誰がいったい味方になってくれるんだろう。
そんな思いで展開を見守りました。

そこに登場する牧師。
あまりに過激な発言をしてクリスティンに近づいてきたので、最初は偽善者の牧師かと思ってしまいました。
ところが彼は最後までクリスティンを助ける、本物の見方だったのです。


「失うものはない」と言って闘うクリスティンの姿は、純粋に息子を想う母親だと感じました。
彼女にとって、息子を想うことは当たり前のことだったんですよね。

そして強大な権力に闘いを挑む主人公は、アウトサイダー的な一匹狼の男ではなく、
どこにでもいそうな地味なシングルマザーなのです。
そこが事実ということで驚きでもありました。



警察組織の腐敗は、クリスティン側に立つと怒り以外の何物でもなく、
聴聞会での結末には、一緒に拍手を送りたい気持ちでした。

そしてもうひとつの息子探し、犯人探しは、警察機構の腐敗を暴くことと同時進行したために、
あっちもこっちも、という印象を受けてしまったのは残念でした。
犯人も警察機構も、もちろんどちらも“悪”なんでしょうが、
クリスティンにとっては、もしかしたら犯人は存在しないと思いたかったのか…。
振り返るとそんな気もします。

ひとつの作品として、とても密度が濃い内容だったように感じます。
けれども、決して重さを感じさせない作品でもありました。


その濃い内容を中和するように流れるイーストウッドの音楽も素晴らしかったです。
ずっと聴いていたい、そんな音楽でした。