グラン・トリノ (2008)

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 「ミスティック・リバー」「ミリオンダラー・ベイビー」の巨匠クリント・イーストウッド監督が、自ら主演して世の中に怒れるガンコ老人を演じた感動の人間ドラマ。急速に様変わりしていく世間を嘆き、孤独に生きる人種差別主義者の偏屈老人が、ひょんなことから隣人のアジア系移民家族と思いがけず交流を深めていくさまをユーモアを織り交ぜつつ綴る。
 長年一筋で勤め上げたフォードの工場を引退し、妻にも先立たれた孤独な老人ウォルト・コワルスキー。自宅を常にきれいに手入れしながら、M-1ライフルと72年製フォード車グラン・トリノを心の友に静かで退屈な余生を送っていた。しかし彼の暮らす住宅街に、もはや昔馴染みは一人もおらず、朝鮮戦争帰還兵のコワルスキーが嫌ってやまないアジア人をはじめ移民の外国人ばかりが我が物顔でねり歩く光景に苦虫をかみつぶす毎日だった。そんなある日、彼が大切にする庭で、隣に住むモン族の気弱な少年タオが不良少年グループに絡まれていた。彼らを追い払おうとライフルを手にしたコワルスキーだったが、結果的にタオを助けることに。タオの母親と姉がこれに感謝し、以来何かとお節介を焼き始める。最初は迷惑がるものの、次第に父親のいないタオのことを気に掛けるようになるコワルスキーだったが…。(allcinema)


俺は迷っていた、人生の締めくくり方を。
少年は知らなかった、人生の始め方を。


製作国 アメリ




今まで当たったことがなかった試写会ですが、
先週に引き続き、今週も出かけてきました。

先週は映画館でしたので、いつものように楽に観られたのですが、
今回の試写会は普通のホールだったので、前の席の人の頭が邪魔で、
字幕を読むのに苦労しました…(T T)

おまけに、こういう作りってどうなのかなと思うのが、映像と字幕の関係ですね。

白い車や白いシャツに白い字幕を入れるというのは、作品に対して失礼だと思うんですよね。
最近こういう作りに出合ってない気がしますから、本当に残念でした。


そういういつもとは違った環境での鑑賞でしたが、
作品自体はとにかく素晴らしかったです。

イーストウッド監督作品は、つい先日【チェンジリング】を観たばかりですが、
私は断然こちらが気に入りました。


公開前だし、結末はやはり想像しながら観る方が絶対にいいと思うので、
その辺りには触れず…。
でも泣きました。
会場のあちこちからもそれを感じられました。


タイトルの“グラン・トリノ”ですが、これは車のことです。
72年製の愛車を愛する頑固な老人・ウォルトをイーストウッドが演じています。
本人とダブるような設定です。

変わっていく自国に対応できず、
へそ出しルックの孫や、アジア系の人たちが移住する街に怒りを感じ、
一緒に暮らそうという息子夫婦を追いだし、ひとりで暮らす老人は、
きっとアメリカだけではなく日本にもいるんじゃないだろうか…。
身近な感じの老人でした。


ところがそんなウォルトが抱えているのは、朝鮮戦争での自分の行為でした。

それは戦争を生き残った人が感じる、生き残ってしまった自分への怒り、
死ぬ場所を求める日々だったのです。


大人として男として、ウォルトの決断は過酷なものでしたが、
それ以外の生き方もできなかったのでしょう。
強烈な印象を残したウォルトの生き方であり、作品となりました。



時々笑いを誘い、緊張感をときに緩ませてくれる脚本は素晴らしく、
また、今作ではほとんど音楽が使われていません。
エンドロールの最初に、きっとイーストウッド本人の歌声でしょう。
グラン・トリノ”の歌が心に沁みました。


多くの感動を残す作品です。