その土曜日、7時５８分

「十二人の怒れる男」「狼たちの午後」の名匠シドニー・ルメット監督が、一つの強盗計画を軸に浮かび上がるある家族の深い心の闇を実力派俳優陣の豪華なアンサンブルで描き出すサスペンス・ドラマ。出演はフィリップ・シーモア・ホフマン、イーサン・ホーク、マリサ・トメイ、アルバート・フィニー。
　娘の養育費もまともに払えない冴えない男、ハンク。そんな彼に兄のアンディはある強盗計画を持ちかける。狙うのはなんと彼らの両親が営む宝石店。ハンクとは対照的に、会計士として働き、美しい妻ジーナにも恵まれて不自由ない生活を送っているかに見えたアンディにも緊急に金が必要なワケがあった。ためらうハンクだったが、アンディに言葉巧みに説得されてしまう。しかし、いざ実行に移す段になって怖じ気づいたハンクは、男を金で雇い、自分は車で待機することに。すると、宝石店から予想もしていなかった銃声があがり、強盗が失敗に終わったことを悟るハンクだったが…。(allcinema)


その瞬間、一つめの誤算。
2007年　アメリカ／イギリス製作作品
原題：BEFORE THE DEVIL KNOWS YOU'RE DEAD

監督： シドニー・ルメット
脚本： ケリー・マスターソン
音楽： カーター・バーウェル
出演： フィリップ・シーモア・ホフマン アンディ・ハンソン
　　　　イーサン・ホーク ハンク・ハンソン
　　　　マリサ・トメイ ジーナ・ハンソン
　　　　アルバート・フィニー チャールズ・ハンソン

ブロ友さんのところで紹介されていて、タイトルだけチェックしていた作品。
内容をすっかり忘れている、というのはよくあることだけど、
この作品に関しては、忘れていた方が楽しめたと思います。

できるだけ、いろんな知識を持たずに観た方が、
緊張感が持続して楽しめるでしょう♪

原題の「死んだことが悪魔に知られる前に、天国へ行けますように」
というのがとても深いと思うのですが、
邦題も、いい味出してると思いますよ。

邦題の「土曜日の７時５８分」に最初の誤算が始まるのです。
そしてラストは、原題に繋がります。

用意周到だったんですよ。
お金がなくて、お金が必要だった兄のアンディが立てた計画は…。
全部うまく言って、倦怠期の訪れた妻ともブラジルでやり直せるはずだったし、
弟のハンクは、延滞している子供の養育費を全額払って、
カッコいいパパになれるはずだったのです。

とろこが、人生はそんな甘くない。
神様だって、うっかり瞬きした瞬間にアンディの計画が実行されてしまったけど、
それを見逃すはずがないわけで…。

ひとつのつまずきから、歯車はうまくかみ合わなくなって、
何かをしようとすればするほど軌道から外れて行く。

家庭と個人が崩壊していく話なので、決して明るくはないのに
予想を裏切られることのない話が延々と続いて行くだけなのに、
ラストまで一気に観てしまいます。

これは脚本の良さと、
何よりもキャストの良さなんでしょうね。

フィリップ・シーモア・ホフマンの崩れた中年というのでしょうか。
くたびれた姿をよく表現しています。
イーサン・ホークも、別れた妻に養育費の支払いを迫られる
どこまでいってもダメで気弱な男の演技は素晴らしいです。

そして、妻を思い続けて辿りついた事実に驚愕する父を演じたアルバート・フィニー。
苦悩する表情は見事でした。
名優ですね～。

展開も結末も内緒なので、ぜひ観ていただきたいです(^^)

悪いことちゃいけません。
悪いことをしたら、それは自分に返ってくるんです。

そんな当たり前のことを思い出させる作品です。