終末のフール

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小惑星が衝突して地球は滅びる、と発表されて5年がたった。3年後にくる“終末”を前に、パニックが過ぎたあとの奇妙な静けさの中でそれぞれの人生の過去と未来に向き合う人々を描く連作短編集。頑固な父親、優柔不断な夫、一人ぼっちになった娘……他者とぶつかり触れあうところに、救われなくても生きていくことを支えるあたたかな光が宿る。



伊坂幸太郎
出版社:集英社





昨年、月に1冊のペースで文庫本を読むことができました。
しばらく活字から遠ざかっていたので、
そんな結果は嬉しいものでした。

2010年も、そのペースで行きたいと思って、
まず選んだのがこの作品。

伊坂幸太郎氏の2冊目です。


短編が繋がっていくというのは、この作家さんの特徴のようです。

“フール”という言葉に引っ掛けて、
どのタイトルにも「○ール」という文字が入っています。


あと8年で地球が滅亡する…。
余命が分かったとしたら、どう生きるだろう。

言葉にするとそんな事なのですが、
それぞれが、それぞれの思いを持って生きている姿を、
決して荒唐無稽にならずに、リアルに描いているところが面白いと思いました。


父親の遺した本を読破する少女がいます。

どうせ死ぬなら、きっとぐうたらに過ごすだろうな。
うん、本を読んだりDVDを観たりしよう。
恋愛もしないとそんかな。

少女の姿を通して、自分自身が存在するような気分になりました。


子供を授かったかもしれない、と悩む若い夫婦もいました。
これは悩む、誰でも悩む。
でも、たとえわずかでも、家族と一緒に過ごす時間は何物にも代えがたい。

そう思わずにはいられませんでした。



普通の人たちの、普通の生活が描かれているのですが、
そこには、それぞれの生きたいという強い願いが込められています。


切ない中にも、さわやかな風を感じる作品です。