独りの風景
動き出した車の中から手を振る。それに応えて手を振り返す。
いつもと同じ別れの風景。
車が見えなくなって部屋に戻ると、テーブルの上に煙草とライター。
しまった…!
慌てて携帯電話を手に取る。
はい。
ライター、忘れてるよ!
ああ…。いいよ。そのまま置いといて。
独りの部屋。
急に気が抜けて、床に座り込む。残されたライターを見つめながら…。
いつもは独りの部屋。週末だけはふたりの部屋になる。そうやってもう5年。
別れの度に寂しくて悲しくて、幾度となく彼を困らせた。
そんなこともあったと、笑って思い出せるだけの時間を過ごしてきた。
夏の風が横切っていく。
季節が変わったことを告げている。
次に季節が変わるとき、独りの部屋はふたりの部屋に変わる。
今日は気分を変えて、創作をお届けしました。
いかがでしたでしょうか