抱擁のかけら

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ボルベール <帰郷>」に続いて4本目の共作となるペドロ・アルモドバル監督とペネロペ・クルス主演で贈る愛と再生のドラマ。生涯をかけた愛が崩壊して以来、視力や人生までも失った映画監督が封印していた悲劇の記憶を解き放ち、再び生きる道を見出していく姿をミステリアスかつ情感豊かに描き出す。共演に「バッド・エデュケーション」のルイス・オマール。
 2008年のマドリード。かつて映画監督として活躍していたマテオ・ブランコは、14年前のある事件で視力を失い、以来ハリー・ケインと名乗って脚本家となり、当時の記憶を封印して違う人生を生きていた。そんなある日、ライ・Xと名乗る男がハリーの前に現われ、自分が監督する映画の脚本を執筆してほしいと持ちかける。やがて、男が自分の封印した記憶に深く関わっていることに気づくハリー。それは、甘美な恋と激しい嫉妬、恐ろしい裏切りに満ちた愛の物語だった──。1994年、新進監督だったマテオは、オーディションに現われた美女レナに一瞬で恋に落ちる。しかし、彼女は富豪エルネストの愛人だった。2人の関係を疑うエルネストは、映画の出資を申し出る一方で、息子のJr.を監視役として送り込むのだったが…。(allcinema)
 
 
2009年 スペイン
原題:LOS ABRAZOS ROTOS
BROKEN EMBRACES
 
愛から逃げて、愛と出逢う
 
監督: ペドロ・アルモドバル 
脚本: ペドロ・アルモドバル 
音楽: アルベルト・イグレシアス 
出演: ペネロペ・クルス レナ
     ルイス・オマール ハリー・ケイン(マテオ・ブランコ)
     ブランカポルティージョ ジュディット・ガルシア
     ホセ・ルイス・ゴメス エルネスト・マルテル
     ルーベン・オチャンディアーノ ライ・X
     タマル・ノバス ディエゴ アンヘラ・モリーナ チュス・ランプレアベ
     キティ・マンベール ロラ・ドゥエニャス マリオラ・フエンテス
     カルメン・マチ キラ・ミロ ロッシ・デ・パルマ アレホ・サウラス 
 
全編を通しての印象は “怖い映画”。
お化けも地震も出てきませんけど、
それ以上に怖いのは、実は人の心なんだと実感する作品です。
 
現在と過去を行ったり来たりするので、多少戸惑うこともあったし、
登場人物の思いが見えないこともあって、
全てを理解するには、ゆっくり考える時間も必要かと思われます。
 
ひとりの、“美しすぎる女”を巡って、
愛したり嫉妬したりする、ふたりの男の姿が描かれています。
 
美しすぎるって罪ね~。
なんて呑気なことを言える内容ではなく、
挙句の果てに復讐にまで発展するほどの愛情の深さって、
想像の域を超えてます。
 
だけど、人を愛すること、それゆえに憎むこと、
それは理屈ではないんですよね。
 
ただその対象の相手しか見えなくなってる…。
そこまで狂おしいほどの感情は、
下手なサスペンスを観るより、怖ろしいものがありました。
 
 
その“美しすぎる女”を演じたペネロペ・クルスは、
本当に美しくてぴったりでした。
ゴールドのアクセサリーで着飾った姿、
真っ赤なスーツ姿。
シルバーのウィッグ姿もとてもキュート。
 
ペネロぺをより際立たせる衣装の数々には、目を奪われました。
 
 
登場人物全員が、かなり奥深くまで絡んでいて、
それぞれの存在感が作品を盛りたてています。
 
 
愛する人を失った悲しみを忘れることはできないけど、
その悲しみを思い出に変えることはできる…。
美しいままで記憶に留めることはできる…。
 
そして新しい人と、新しい時間を動かすことはできる。
 
 
愛する人との別れをきっかけに、自分の名前を捨てた男が、
全ての呪縛から解き放たれて、もう一度名前を取り戻す、
ある意味再生の話なのかもしれません。
 
 
言葉にするのが難しい作品です。
心の奥に入り込む、とても静かだけど激しく美しい作品です。
 
お気に入りの一本になりそうです。