サラの鍵 (2010)

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 タチアナ・ド・ロネによる世界的ベストセラーを「イングリッシュ・ペイシェント」のクリスティン・スコット・トーマス主演で映画化した衝撃と感動のヒューマン・ドラマ。ナチス占領下のフランスで起きたユダヤ人迫害事件を背景に、一人の少女が辿る過酷な運命を、事件の真相を追う現代のアメリカ人女性ジャーナリストの取材の過程を通して描き出していく。共演にメリュジーヌ・マヤンス。監督は「マルセイユ・ヴァイス」のジル・パケ=ブランネール。
 夫と娘とともにパリに暮らすアメリカ人ジャーナリストのジュリア。ある日、自分たちのアパートのかつての住人が、1942年にフランス当局によるユダヤ人迫害事件によってアウシュビッツに送られたユダヤ人家族だったことを知る。フランス警察による一斉検挙の朝、10歳の長女サラは、弟を守るため納戸にかくまい鍵をかける。すぐに戻れると思っていたサラだったが、他の多数のユダヤ人たちとともにすし詰めの競輪場に隔離された末、収容所へと送られてしまう。弟のことが心配でならないサラは、ついに収容所からの脱走を決意するが…。(allcinema)
 
2010年
原題:ELLE S'APPELAIT SARAH

上映時間 111分
製作国 フランス
 
ただ、伝えたい。
決してあなたを忘れなはしないと。

 
監督: ジル・パケ=ブランネール 
製作: ステファーヌ・マルシル 
製作総指揮: ガエタン・ルソー 
原作: タチアナ・ド・ロネ 
脚本: ジル・パケ=ブランネール  セルジュ・ジョンクール 
撮影: パスカル・リダオ 
美術: フランソワーズ・デュペルテュイ 
衣装: エリック・ペロン 
編集: エルヴェ・シュネイ 
音楽: マックス・リヒター 
出演: クリスティン・スコット・トーマス ジュリア・ジャーモンド
    メリュジーヌ・マヤンス サラ・スタルジンスキ
    ニエル・アレストリュプ ジュール・デ。ユフォール
    エイダン・クイン ウィリアム・レインズファード
    フレデリック・ピエロ ベルトラン・テザック
    ミシェル・デュショーソワ 
    ドミニク・フロ 
    ナターシャ・マスケヴィッチ 
    ジゼル・カサデサス
 
行きつけのシネコンではやらないミニシアター系の作品は、
いつもはDVDスルーなんですが、今回はちょっと違ってました。
ブログやTwitterで評判がいいんです。
観たい!
ということで、前売り券を買って行って来ました。

福岡は、あちこちのミニシアターが閉鎖になって、ようやくひとつ残っている“KBCシネマ”
実はお初でして…(^^ゞ
自由席で客席も100席強、開場前に並ぶなんて久しぶり~。
段差のないフラットな客席に、前の人の頭は大丈夫かしら、と思っていると、
スクリーンが高い位置にあるので、それは大丈夫だと分かりました。
なんだか懐かしい雰囲気です。
 
前置きが長くなりましたが…。
 
1942年。
フランス警察がパリに住むユダヤ人を一斉検挙。
ヴェルディヴ”(冬期競輪場)に収容されたサラとその家族。
サラは機転を利かせたつもりで、弟を納戸に閉じ込めて鍵をかけます。
「私が帰って来るまで出ちゃダメよ」と言って。
そしてそのまま収容所へ送られることになります。
父からも母からも「おまえが置き去りにした!」となじられるサラ。
何としてもパリに帰る、家に帰って弟を助け出す。
その一心で収容所から脱走するサラ。
 
もうひとつは2009年。
ジャーナリストのジュリアとその家族は、
夫の祖父母から譲り受けたアパートをリフォームして暮らそうとしています。
ヴェルディヴ”事件を調べるジュリアは、
自分たちが住もうとしているアパートと、サラの家族との結びつきに辿りつきました。
 
ふたつの時代、ふたりの女性の話が交互に語られます。
 
フランスでもあったユダヤ人迫害。
もっと生々しく描かれているのかと思っていたけど、
そこが重要なのではなく、そのために人生を狂わせたサラの話でした。
 
面白いことに、サラ自身の言葉はひとつもありません。
彼女を助けた老人の手紙、
ジュリアの義父の話、
サラの息子の話、
そしてジュリアの言葉…。
皆がサラのことを想像し、語って行きますが、どれが真実なのかははっきりしないのです。
60年と言う時間が壁となり、それを知っている人が少なかったり、
また、悲しい、苦しいことを語りたがらなかったりしたためです。

何が起きたのか、ジュリアはサラのことを調べつつ、
自分自身に宿った新しい命についても考え続けます。
 
ジュリアの夫が言います。
「全てを明らかにして誰か幸せになるのか、世の中がよくなるのか」
確かにその通りです。
それでも知りたいと思うジュリア。
知ってしまったことを封印することができない。
知らなかったことにすることができない。
知った上で、それを受け止めようとするジュリア。
忘れないために、全てを知ろうとするジュリア。
 
彼女の選択は、最後に語られます。
思い出しても涙がこみ上げる一言。
娘の名前は「サラ」

フランスで起こったユダヤ人迫害事件。
それをベースにしながら、生きることとは誰かの過去と繋がっているということ、
誰かの未来へ繋がって行くということ、
を描いている作品でした。
 
悲しい歴史を繋いではいけない、とも思った作品でした。