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 作家・評論家の川本三郎が自身の若きジャーナリスト時代の衝撃的な体験を綴った回想録を、「悪人」の妻夫木聡と「ノルウェイの森」の松山ケンイチの初共演で映画化。学生運動が佳境を迎えた激動の1970年前後を舞台に、理想に燃える若手ジャーナリストが、革命を目指す活動家の青年と出会い、彼が引き起こした事件に巻き込まれていく中で、様々な葛藤に直面する姿を描き出す。監督は「リンダ リンダ リンダ」「天然コケッコー」の山下敦弘
 東大安田講堂事件が起きた1969年、理想を胸に大手新聞社に入社し週刊誌編集記者として働いていた沢田は、やがて先輩記者の中平とともに活動家たちに接触、彼らの日々に密着していく。その中で沢田は“武器を奪取し、4月に行動を起こす”と語る若者、梅山と巡り会う。その決起宣言には疑念を持ちながらも、不思議と親近感を抱くようになり、取材を進めるうち次第に梅山との交流を深めていく沢田だったが…。(allcinema)
 
2011年
上映時間 141分
 
僕たちは、“何を”信じるのか──
1971年。若きジャーナリストと革命家。二人の出会いが引き起こした衝撃の事件。
激動の時代に翻弄された若者たちのすべて。
 
監督: 山下敦弘 
プロデューサー: 青木竹彦  根岸洋之  定井勇二 
原作: 川本三郎 
脚本: 向井康介 
撮影: 近藤龍人 
美術: 安宅紀史 
編集: 佐藤崇 
音楽: ミト  きだしゅんすけ 
音楽プロデュース: 根岸洋之 
主題歌: 真心ブラザーズ  『My Back Pages』 奥田民生 
照明: 藤井勇 
録音: 小川武 
出演: 妻夫木聡 沢田雅巳
       松山ケンイチ 梅山(片桐優)
       忽那汐里 倉田眞子
       石橋杏奈 安宅重子
       韓英恵 浅井七恵
       中村蒼 柴山洋
       長塚圭史 唐谷義朗(東大全共闘議長)
       山内圭哉 前橋勇(京大全共闘議長)
       古舘寛治 中平武弘(週刊東都記者)
       松浦祐也 タモツ
       青木崇高 キリスト
       山本浩司 佐伯仁
       山本剛史 清原
       中野英樹 津川(週刊東都記者)
       菅原大吉 小林(東都ジャーナル編集長)
       康すおん 高峰(刑事)
       中村育二 島木武夫(週刊東都編集長)
       山崎一 徳山健三(週刊東都デスク)
       あがた森魚 飯島(東都ジャーナルデスク)
       三浦友和 白石(東都新聞社社会部部長)
 
昨年観た【ノルウェイの森】と同じ時代みたいだな、と思いながら鑑賞し始めました。
 
妻夫木聡扮する沢田が、道端でひよこを売ってる男と一緒にいるシーンから始まります。
さて、この沢田、何者?
と思っていると、お風呂に入ったりネクタイを締めたりした後、
職場に戻って行くんですが…。
週刊誌の記者が、一カ月かけて都内に潜伏して取材をした後だと分かり、
少しずつ状況が見えてきました。
 
沢田は、週刊誌の記者ではあるけど、
スクープが欲しいと、事件を探して学生運動の活動家と接触

接触した革命家を名乗る松山ケンイチ扮する梅山は、どうみても胡散臭い。
話をすればするほど、幼稚な部分や見栄っ張りな部分が感じられます。
沢田が冷静であれば、きっとその辺は感じ取れたんでしょうが、
とにかくスクープが欲しいと思っているから、気がつけば梅山に巻き込まれてしまうのです。

沢田の行動は、あるところで現在放送中のTVドラマ【運命の人】と重なりました。
記者は記事についての守秘義務があると言い続ける辺りです。
そう言えば、このドラマとも同じ時代ですね。
それでも沢田の言い分には力が感じられません。
そう言いながら、自分を正当化しようとしているだけの様な気がして…。
 
横道にそれましたが…。
 
沢田は高い理想は持ちつつも、どこか優しい青年だと感じました。
その心優しき沢田が梅山と関わり、
学生運動から革命、そして殺人と、事件を追い続けるうちにどんどん道を外れていく様が、
妻夫木君の頼りない表情と共に描きだされていきます。
 
その反面、革命家と言いながら、実はただの見栄っ張りな男だった梅山は、
人を小馬鹿にしたような表情と言い、傲慢な口調と言い
こいつ、変…!
と感じるように、松ケンがうまく演じています。
 
沢田の成長記でもあるわけで、
そういうテイストでもなければ、かなり陰鬱な印象になったでしょう。
ラスト。
冒頭の、ひよこ売りの男性が店を構えていることろに出会うわけだけど、
沢田が何を感じて涙するのか…。
自分との違い?
時の流れ?
それとも安心?
いろんなものを含んだ涙に、
沢田が戻ってきた感じがして少し救われた気がしました。
 
 
40年前。
そんな若者がいた。
そして日本と作ってきた。
身近な歴史を感じる作品でした。