トイレット

イメージ 1 「かもめ食堂「めがね」荻上直子監督が“家族”をテーマに手掛けたドラマ。今回は全編カナダ・ロケを敢行。それぞれに問題だらけでバラバラな3兄妹と、荻上監督作常連のもたいまさこ扮する日本人の祖母“ばーちゃん”が、奇妙な共同生活を経ながら家族としての絆を徐々に紡いでいく姿をユーモラスに描く。
 引きこもりでピアニストの兄モーリー、厭世的でプラモデルオタクの弟レイ、勝ち気な大学生の妹リサの3兄妹。それぞれ好き勝手に生きてきた彼らも、母親を亡くしたことを機に彼女の遺した実家で同居することに。さらにそこには、猫のセンセー、そして母が亡くなる直前に日本から呼び寄せた3兄妹の祖母“ばーちゃん”もいた。英語の喋れない彼女は自室に籠もりきりで、トイレが異常に長く、出てくると何故か必ず深いため息をつく。そして、何かというと財布からお札を出しては孫たちに気前よく差し出す不思議な人。そんな、孫たちとは似ても似つかぬばーちゃんだが、3兄妹と交流を重ねていくうち、彼らの間には少しずつ絆が芽生えていく…。(allcinema)
 
2010年
上映時間 109分
製作国 日本/カナダ
 
「みんな、ホントウの自分で、おやんなさい」
 
監督: 荻上直子 
プロデューサー: 小室秀一  木幡久美  ショーン・バックリー 
エグゼクティブプロデューサー: 尾越浩文 
脚本: 荻上直子 
撮影: マイケル・ルブラン 
プロダクションデザイン: ダイアナ・アバタンジェロ 
衣装: 堀越絹衣 
編集: ジェームズ・ブロックランド 
音楽: ヴードゥー・ハイウェイ 
フードスタイリスト: 飯島奈美 
出演: アレックス・ハウス 次男レイ      タチアナ・マズラニー 長女リサ
    デヴィッド・レンドル 長男モーリー   サチ・パーカー 謎の女性
    もたいまさこ ばーちゃん
 
かもめ食堂は雰囲気が好きだったなあ。
【めがね】は未見だけど、ハードな作品が続いていたので、ほのぼのしたくて鑑賞しました。
 
予告編を観ていたので、ある程度は予測していたんだけど、
おお!全編英語で字幕付きではないか!
 
舞台はもちろん日本ではないし、登場人物もほとんど英語圏の人たち。
そこに“ばーちゃん”と呼ばれるもたいまさこがいる。
…だけど、セリフはない。
三兄弟の二番目・レイの目線で進んでいきます。
レイはプラモオタクなんだけど、働いています。
長男のモーリーはパニック障害を抱えた引きこもり。
ピアノが上手だけど、亡くなった母親のミシンでスカート作って穿いちゃう、
ちょっと変わった青年。
三番目は大学生の妹。
男兄弟の中で育ったせいか、男勝り。
 
そんな三人が、母親を亡くしたところから始まり、
祖母“ばーちゃん”との生活によって、少々問題のあった三人が
それぞれに進む道をみつける、というお話。
 
母親がいたから、多分三人は何も考えずに生きてきた。
…というか二十歳前後の若者ってそんなもんでしょ。
ところが、母親と言う枷がなくなると、手元を離れた風船みたいにふわふわ漂うわけです。
個性的な三人は、どこへ飛んでいくのかかなり危うい状態なんだけど、
それを“ばーちゃん”がいることで繋ぎ止められた気がします。
 
言葉が通じない、食事もしない。
もしかしたら血がつながっていないかもしれない。
そんな“ばーちゃん”は厄介者です。
だけど、“ばーちゃん”のおかげで、
ふわふわ漂う状態を維持したまま飛び出さずに済んだ。
進む道を見つけた。
 
かなり無理がある設定なんだけど、観ようによっては心に沁みるのですよ、これが。
 
モーリーが自分を取り戻し、ピアノのコンクールに出場したけど、
舞台に上がった瞬間、パニック障害の発作が起こって立ち往生してしまう。
客席にいた“ばーちゃん”が声を懸ける。
予測がついたシーンだけど、
そこで演奏を始めたモーリーの姿には感動してしまいました。
 
全編を通して演奏されるピアノ曲
リストやベートーベンなども楽しめます。
 
クスリと笑わせてくれるシーンもあるし、果たして“ばーちゃん”はいったい何者だったのか、
なんてことは考えずに、物語に身を委ねられると、きっと楽しめるでしょう。