ある愛へと続く旅

 「赤いアモーレ」のセルジオ・カステリット監督が再びペネロペ・クルスを主演に迎え、妻でもある人気作家マルガレート・マッツァンティーニのベストセラー小説を映画化した深い愛と感動のヒューマン・ドラマ。90年代のボスニア紛争を背景に、かつてサラエボで青春の日々を過ごしたイタリア人女性が、亡き夫との思い出の地を忘れ形見の息子と旅する中で、ひとつの真実と向き合うさまを描く。共演は「イントゥ・ザ・ワイルド」のエミール・ハーシュ
ローマに暮らすジェンマは、反抗期にある16歳の息子ピエトロとの関係に頭を悩ませる日々。そこへ、かつて彼女が留学していたサラエボに住む旧友ゴイコから、ある誘いの電話がかかってくる。そこで彼女はピエトロを連れて、サラエボへと向かう。20年以上前、彼女はゴイコから紹介されたアメリカ人カメラマンのディエゴとこのサラエボで出会い、恋に落ちた。2人は結婚し、ローマで幸せな結婚生活を送る。しかし、ボスニア紛争が始まるとディエゴは現地へと飛び、ジェンマも後を追って人道支援活動に参加する。戦火の中、子どもが欲しいという2人の願いは強まり、妊娠のできないジェンマはミュージシャンを目指すアスカに代理母としての願いを託すのだったが…。<allcinema>

イメージ 12012年 原題:VENUTO AL MONDO  TWICE BORN
上映時間 129分  製作国 イタリア/スペイン
愛した記憶を巡って――
いま真実(ほんとう)のあなたに会いにゆく

監督:セルジオ・カステリット
製作:セルジオ・カステリット ロベルト・セッサ
原作:マルガレート・マッツァンティー
脚本:セルジオ・カステリット マルガレート・マッツァンティー
美術:フランチェスコ・フリジェッリ
音楽:エドゥアルド・クルス
出演:
ペネロペ・クルス/ジェンマ
エミール・ハーシュ/ディエゴ
アドナン・ハスコヴィッチ/ゴイコ
サーデット・アクソイ/アスカ
ピエトロ・カステリット/ピエトロ
ジェーン・バーキン精神分析
リストインした理由が分からないままに観終えて、
慌ててボスニア紛争をネットで検索しました。
そういう時代のお話です。

始まってしばらくは、時間の流れが掴めなくて多少戸惑ってしまいますが、
どんどん引き込まれました。

サラエボで、共通の友人を介して知り合ったジェンマとディエゴは恋に落ち、結婚。
幸せなふたりを悩ませたのは、子ども。
子どもがほしいふたりだったけど、ジェンマは妊娠できない身体だと分かる。
こども。これがキーワードです。

現在のジェンマにはピエトロという息子がいます。
ディエゴとの子ども、というけれど、台詞のあちこちに違和感を感じます。
それがひとつずつ解き明かされて行きます。

紛争が始まるサラエボで、代理母を引き受けたアスカとディエゴが急速に接近し、
挙句、ディエゴはアスカを愛していると言ってジェンマと別れることに。
その変貌、ディエゴの変わり様は、異様な雰囲気を感じました。

ジェンマは、約束通りお金で生まれた赤ん坊を引き取り、帰国。
けれど、ディエゴはサラエボに留まり、その理由がジェンマには分かりませんでした。
もちろん、観客も同じ…。

そして現代。
息子を連れてサラエボを旅するジェンマに、事実が告げられます。

代理母を引き受けたアスカは、その時暴漢に襲われ、
ディエゴは隠れたままアスカを救うことができなかった。
囚われの身となったアスカと、そこから救い出そうとするディエゴ。
その後ディエゴは、自分を赦すことができなかったんでしょうね。
自ら命を絶ちます。
台詞は少なく、観ていても苦しい時間でした。

ジェンマを演じるのはペネロペ・クルス
女子大生から20年くらいを演じるけど、顔の皺や体系など、
ちゃんと年を取っていくから凄いなあ~と思いました。
ディエゴを演じたエミール・ハーシュも良かったです。

ジェンマは愛するディエゴの血をひく息子だと信じていたけど、そうではなかった。
全てを知ったジェンマは、それでも息子を愛していたし、
自分を捨てて去ったディエゴが、決して自分を裏切ったわけではなく、
責任感の強い男だったと知るわけです。
ディエゴの立場なら、アスカを見捨てることはできないでしょう。
辛い選択だったはずです。
そのアスカも今は幸せに暮らしていて、ピエトロの妹も生まれていました。

ミュージシャンを志していたアスカの血を引いたピエトロは、
ギターを弾き、その血を感じさせます。
彼自身も、アスカに何かを感じたのでしょうね。
帰国の途に就いたとき、それまでイラついていた母親に対して優しく声をかける…。

どんな風に生まれたとしても、ピエトロには何の責任もない。
一緒に育んだ時間が大切だと感じる瞬間でした。
そしてさらに、戦争という悲劇を背負った親子に、
新しいきずなが生まれた瞬間だったのではないでしょうか。


戦争の悲劇を描きながら、希望を感じることもできるラストでした。