朗読者

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15歳のぼくは、母親といってもおかしくないほど年上の女性と恋に落ちた。「なにか朗読してよ、坊や!」──ハンナは、なぜかいつも本を朗読して聞かせて欲しいと求める。人知れず逢瀬を重ねる二人。だが、ハンナは突然失踪してしまう。彼女の隠していた秘密とは何か。二人の愛に、終わったはずの戦争が影を落していた。現代ドイツ文学の旗手による、世界中を感動させた大ベストセラー。



ベルンハルト・シュリンク/著
Schlink,Bernhard

1944年ドイツ生まれ。ハイデルベルク大学、ベルリン自由大学で法律を学び、1982年以降、ボン大学などで教鞭をとる。現在フンボルト大学法学部教授。1987年、ヴァルター・ポップとの共著『ゼルプの裁き』で作家デビュー。1992年発表の『ゼルプの欺瞞』でドイツ・ミステリー大賞を受賞。1995年、『朗読者』刊行。2000年には短篇集『逃げてゆく愛』を発表している。『朗読者』は映画化され、2009年に公開予定。



9月の1冊です。

先に映画を観たので、内容は分かっていましたが、
映画は、本当に原作に忠実に描かれていると驚きました。
なので、内容を追わずに、語り手のミヒャエルの言葉を追うことができました。

15歳のミヒャエルは、最初は単なる好奇心だけだった。
だけど、年上のハンナへの想いは真剣だったのです。
真剣だったはずなのに、ミヒャエルはハンナの存在を周囲へ隠し続けました。
これは本人が語っているようにハンナへの裏切り行為でした。

隠し続けたミヒャエルの気持ちは、なんとなく理解できる気がします。
ハンナとの関係を、友人より先に恋人を作ったことへの自慢と、
その反面、普通ではない恋人を恥ずかしく思ったり…。


プールという公の場でミヒャエルのがハンナを無視したからといって、
それがハンナが姿を消した理由ではないにしろ、
ハンナがミヒャエルとの将来を考えたかどうかは疑問なのです。

ハンナが姿を消したことで、ミヒャエルは疑問を投げかけてきます。
?が多用され、ミヒャエルの心の動揺をよく表しています。


そして裁判での再会。
ミヒャエルの心の動きは複雑です。
そして心が決まると一直線です。
そんな姿は、15歳の時から変わらない…。


ミヒャエル手動で描かれていますから、
ハンナが何を感じ、考えていたかは想像するしかないのですが、
ハンナが文盲だと言うことをどれくらい恥じていたのか、
これはミヒャエルの言葉として書かれています。

彼女はいつもちょっぴり自分を偽っていたし、完全に率直でもなく、自分を出そうとしなかった
から、それはみすぼらしい真実であり、みすぼらしい正義ではあるのだが、それでも彼女自身の真実と正義であり、その闘いは彼女の闘いだった。

そしてミヒャエル自身も、犯罪者を愛したことを罪だと言いきっている。


ミヒャエルの気持ちはよく伝わります。
ハンナを愛し続けたいと言う気持ちと、素直にそれを認めたくない気持ち。
常にそれを背負いながら生きてきたのです。
…生きて行くのです。



文盲だと言うことが問題なのではない。
被告が恥ずかしがっていると言うことが問題なんだ。

納得させられた文章でした。


映画で見た風景が頭をよぎります。
映画も本も、どちらも素晴らしいです。